佛教大学副学長・教育学部教授
子どもたちが利用するネット空間の変化にコロナ禍での自粛生活が加わったことで、ネットいじめの量的・質的変化がもたらされたことは、これまでの連載で見てきたような調査結果からも明らかだと考えられます。こうしたネットいじめの発生率の高さの要因として、子どもたち自身も説明できない「生きづらさ」がまん延していることを指摘したいと思います。
最近のいじめの特質は、一定の人間関係がある集団の中にいじめとの境界線があいまいな「いじり」が顕著となり、かつネットの中でもそうした関係がまん延し始めたことです。こうした現状は以下の2つの問題点を抱えています。そこで、ネットいじめも含めたいじめ全般を俯瞰し、その抑止に向けた方略に言及してみましょう。
ネットいじめもリアルいじめも、そのリスクは共通して学力低位層の集団で高く、グループ内にあってはスクールカーストが低い子に攻撃が向きやすい傾向があります。では、ネットいじめだけに見られる傾向はあるのでしょうか。
ネットいじめの発生率に違いが見られるのは、スクールカーストだけではありません。今回は高校の学力階層別に、ネットいじめの発生率を見ていきます。具体的に、高校階層を偏差値別に7分類し、各学校群のネットいじめの様相を明らかにしてみます。
ネットいじめをスクールカーストの視点で捉えると、何が見えてくるのでしょうか。私たちの研究グループが2016年と21年に実施した、近畿地方の高校生を対象としたネットいじめに関する大規模調査を基に考えてみましょう。
最近の子どもたちの様子を見ていると、友達関係のつくり方に変化が生じていることが分かります。例えば、昔に比べて一つのグループの構成人数が小さくなっており、その小さなグループ内にいる子どもの趣味や髪型・服装までもがよく似通っています。もちろん、みんなの仲が良ければ問題はないのですが、こうした凝集性の強い集団に起こりやすい人間関係のトラブルは何でしょうか。
最近、大学生の友人づくりに変化が起きています。皆さんは「#春から〇〇大学」をご存じでしょうか。新入生が入学前にTwitterやInstagramなどに入れて投稿することで、同じ大学に入学する学生とつながるための方法の一つです。一昔前までは、入学式や新入生オリエンテーションで友人づくりをしていましたが、今は入学前から始まっているのです。
「ネットいじめ」という用語が登場したのは、2000年代の初めだと言われています。長崎県佐世保市で小学6年生の女子が、インターネット上の掲示板のやりとりの齟齬(そご)から同級生を刺殺してしまったのは2004年のことです。この時は「ネットいじめ」という用語は出てきませんでしたが、インターネット上のやりとりが子どもたちの生死に関わる事件になった出来事として知られています。
コロナ禍によって子どもたちの生活は大きく変化しました。その最たるものが、インターネットの利用時間の増加やオンラインゲームの流行でしょう。学校は幾度となく休校や分散登校などの措置を余儀なくされ、通常の生活が送れない状態が続きました。修学旅行や運動会の中止、部活動の制限など、さまざまな側面で子どもたちは我慢を強いられることが数多くありました。
この数年、コロナ禍によって社会の状況は大きく変化しました。とりわけ学校現場における最も大きな変化は、授業にタブレット端末を導入したことです。GIGAスクール構想により、インターネットを用いたオンライン授業や、教師が授業の様子を録画して配信するオンデマンド授業も、積極的に取り入れられるようになりました。
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