日本では、「災害被災者」というと高齢の方々や障害のある方々を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、世界の災害では、被災人口の約半分を子ども(18歳未満)が占めています。
世界の人口約80億人のうち、開発途上国と呼ばれる国々に80%以上の人々が住んでいます。アフリカや南アジア地域など子どもの人口が国全体の半数近くを占めている国も多いので、被災人口に占める子どもの数が多くなるのです。
私が国連児童基金(UNICEF)に勤めていた間にも、2004年12月に、マグニチュード9.0以上を記録したスマトラ島沖地震がありました。スリランカやタイをはじめとする東南アジア沿岸地域の人々が、22万人以上(タイのリゾート地などに旅行に行っていた日本の方々も含め)亡くなられました。防災教育を受けたことがなく、津波というものを知らなかった子どもや女性たちが多く犠牲になりました。
05年10月、カシミール地方などを襲ったマグニチュード7.6のパキスタン北部地震では、約8万人の死亡者のうち約2万人が子どもでした。耐震ではないレンガ造りなどの校舎が崩壊して、多くの子どもたちが犠牲になりました。私は地震から2年後、07年10月にUNICEFパキスタン事務所に子どもの保護専門官として赴任しましたが、その当時もまだ青空教室で学ぶ子どもたちがたくさんいました。日本のように政府が仮設住宅や復興住宅を提供してくれるわけではないので、被災後すぐに国連などが提供したテントにまだ住んでいる人たちもたくさんいました。
学校が崩壊して再開困難になったため、学校に行くことをやめて働き始めた子どもたちや、親が生活に困って18歳未満であっても子どもたちを結婚させてしまう児童婚も多く見られました。1万人以上の子どもたちが、親を亡くしたり親と離れ離れになってしまったりしたため、親を亡くした子どもたちへの心理社会的な支援も必要とされました。
私がパキスタンを離れた10年末、UNICEFや各国政府などの援助機関はまだ学校の建設支援を継続していました。05年の地震から5年がたっても学校は再開されず、住居などのインフラ設備も復旧しておらず、子どもたちの心の復興には、なお時間がかかっていました。