メンタルヘルステクノロジーズの刀禰です。第4回目は、「教育現場におけるメンタルヘルスの問題」についてお話をさせていただきます。引き続き、このコラムで言うメンタルヘルスによる心の病は、「適応障害や軽度の鬱(うつ)」と定義して話を進めたいと思います。
「教職員の働く場は他と違うのだから、他の業界で通じたことができるとは限らない」という認識があると思います。実は、この「○○業界は、他と違う」という認識は、ほとんどの業界の人が同じことを思っているようです。
しかし、メンタルヘルスの問題が発生する理由の9割以上は同じです。従って、まずは「特別視」をしないことが大切です。加えて、教育界には医療業界と同じくらい「自己犠牲は当然である」というような文化がありますが、もはやこの「自己犠牲精神」を前提とした職場の文化は成り立たないと考えることが重要です。
その上で、教育現場におけるメンタルヘルスの問題として最初に挙げられるのは、労働安全衛生の順守、そして課題への対応の実行です。法令順守について言えば、どこの教育委員会も健康診断やストレスチェックは実施していますが、それ以外の項目を順守している現場は多くありません。また、これら健康診断やストレスチェックを実施したからといって、教職員が健康になり、メンタルヘルスが病まないということではありません。少し考えれば分かることですが、健康診断もストレスチェックも、あくまで「心身のチェック」というのが法的に位置付けられた内容です。本来はチェック後に対策を練らないといけませんが、これが実践されていません。
また、長時間労働も問題です。私は多くの教育現場でいまだに80時間以上の残業が当たり前になされていることを知り、驚きを隠せませんでした。加えて、さらなる多機能を求められている教職員を目の当たりにし、これではメンタルヘルスを病む人が増えるのも仕方がないと感じました。
当社では、法令順守のみに徹した運用を「形式運用」、課題に応じて効果的な運用を実践することを「課題解決型運用」と呼んでいます。今、教育現場に求められているのは「課題解決型運用」です。その真ん中にあるのは産業医や産業保健師の存在であり、彼らと教職員の信頼関係構築が最も重要なのです。ところが、現場の教職員の方々の中に産業医や産業保健師の顔を知っている方はとても少ないのではないでしょうか。果たして、顔を知らない産業医や産業保健師に、本音で相談することなんてできるでしょうか。
教職員のメンタルヘルス問題を解決するためには、現場の教職員の方々が本音で相談できる産業医や産業保健師の存在が不可欠です。そうした専門職の活躍なしに、この問題は解決できないと考えています。