学級経営に必要なことを一つ挙げるなら何でしょうか。教師のリーダーシップ、学級の規律、子ども同士の関係づくり…。どれも大切ですが、ぼんやりとしています。一つだけと言われれば、「最初の方針を大切にすること」だと私は思っています。
例えば、私の場合なら「賢く→挑戦」「仲良く→言葉」を1年間大切にし続けます。とはいえ、「挑戦することは大切なんだ」と子どもたちに100言ったとしても、子どもたちの行動は簡単には変わりません。
でも、子どもたちの中で、挑戦しようとした小さな変化があったとき、それを価値付けていくことができれば、そこに化学変化が起きます。例えば、授業の中で「この文章読める人いる?」と問い掛けたとき、勇気を出して手を挙げたその場面を価値付けていく必要があります。
「こうやって挑戦するから、賢くなるんだよなぁ。うれしいなぁ」
年度当初はそういった言葉が教師から次々と出てくる必要があります。時には、まだ行動に移す前から認めていくこともあります。
「〇〇さんの頑張ろうとする気持ちが姿勢から伝わるなぁ」
そうやって認められると、自然と子どもたちの姿勢は良くなっていきます。そうして化学反応が起きて、低学年ならやる気に満ちた姿勢になるでしょう。
つまり、何が言いたいのか。教師が語った学級のビジョンは、その後の子どもたちの行動や気持ちを価値付けなければ変わらないということです。当たり前のようですが、実はこれを続けるのはなかなか難しいものです。子どもたちの頑張りを見取り、その行動を認めていく。こうした営みの連続の中で、初めて子どもたちの変わろうとする心に火がともるのです。
さて、こうした話を聞くと、子どものことを認めてさえいれば学級経営が全てうまくいくかのように思うかもしれません。当然、そんなことはありません。時には、叱る場面もやって来るでしょう。だからこそ、叱ることについても事前に予防線を張ります。私の場合、どんな場合に叱るのか、子どもたちにも語るようにしています。
私が叱る場面は次の3つです。(野口芳宏氏の実践の修正追試)
①命に関わるとき
②友達を傷つけたとき
③何度伝えてもその行動を直そうとする気持ちが見られないとき
この3つをなぜ伝えるのか。それは子どもをむやみに叱らないためです。子どもたちに叱る場面を伝えることで、子どももどんなときに叱られるのか自分で考えます。そして、教師自身も安易に叱らなくなるのです。
方針や叱る原則を伝えたら、いよいよ学級の仕組みづくりについてです。次回はこれを取り上げます。
※今回の連載に関連した動画(叱る三原則)