【HSP・HSCの本質(1)】学校現場とHSPブーム:その功罪を問う

【HSP・HSCの本質(1)】学校現場とHSPブーム:その功罪を問う
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 近年、HSPあるいはHSCという言葉が学校現場に入り込み始めています。それぞれHighly Sensitive PersonとHighly Sensitive Childを略した言葉です。その意味については本連載でご紹介しますが、直訳すれば「とても感受性が高い人(子ども)」になります。2019年頃から、この言葉はマスメディアを通じてブームになり、23年現在もそれは続いています。

 HSPブームの影響は、精神医療の現場だけではなく、学校現場にも影響を及ぼしつつあるようです。一体何が起こっているのでしょうか。これは保護者や教員、子どもにとって望ましいものなのでしょうか。学校で子どもに関わる教員はHSPブームにどのように向き合ったらよいのでしょうか。本連載ではHSPにまつわる考え方を整理しながら、これらの問いに答えていきたいと思います。

 HSPは「繊細さん」とも表現され、マスメディアで特集が組まれたことなどをきっかけに日本で広く知られるようになりました。19年以降、著名な芸能人が自身をHSPであると公表したり、HSPに関するさまざまな書籍が出版されたり、新聞やネット記事が日々公開されたりしています。TwitterやInstagramなどのSNSでもHSPに関する発信は多く、HSPを自認する方々が交流する様子も見えます。

 「HSPを学べる大学はありますか?」「HSPをテーマに高校の卒業論文を書きたいのでインタビューさせてください」といったメールが、高校生から筆者のもとに届きます。高校の先生からは「生徒が自由研究でHSPを取り上げるので、アドバイスをもらいたい」と連絡をいただくこともあります。知人のスクールカウンセラーが行った調査によれば、高校生の「5人に1人」がHSPという言葉を知っていたそうです。さらに、とある教育委員会では生徒の指導方針として、「HSCに対する配慮」を明文化しています。

 HSPブームの影響は、大学にも及んでいます。私が勤務する大学で調査を行ったところ、驚くべきことに50%程度もの学生がHSPという言葉を知っていました。また、「HSPに関心があるので、お話を聞かせてください」と学生からメールをもらうこともあります。HSPを卒業論文のテーマにする学生も増えているようです。

 良くも悪くも、HSPという言葉はこれからますます学校現場に入り込んでいく兆候が見えます。その影響は、学校関係者にとって無視できないものになるかもしれません。この連載を通じて、学校現場とHSPブームの関係について考えていきましょう。

【プロフィール】

飯村周平(いいむら・しゅうへい)1991年生まれ。茨城県出身。2019年、中央大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)を経て、22年より創価大学教育学部専任講師。専門は発達心理学。研究テーマは、思春期・青年期の環境感受性。心理学者によるHSP情報サイト「Japan Sensitivity Research」企画・運営者。主著に『HSPブームの功罪を問う』(岩波書店、単著)、『HSPの心理学:科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」』(金子書房、単著)。Twitter ID:Tokyo 6 Heart

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