今回は少し視点を変えて、初任者と組む先生方に向けて書こうと思います。
採用試験の倍率低下、遅々として進まない学校の働き方改革、過去最高を更新した休職者数…。学校現場に暗い情報が飛び交う中、それでも教師になろうと決意してくれた初任者は、日本の宝だと思います。
そして、そんな宝を育てるのが初任者を指導する先生方です。そんな重責を担う先生方に、初任者に対するNG指導のベスト3をお伝えします。
初任者といっても一人前の教師で、子どもたちにとっては尊敬すべき存在です。しかし、そんな教師を初任者指導だからといって、子どもの前で指導したらどうなるでしょうか。当然、子どもたちの信用が揺らぎます。あの先生、怒られてる――そうした小さなゆがみが、学級経営を悪くしていきます。
私が初任者の頃、それとは真逆のことがありました。私の学級には「じっちゃん先生」と呼ばれる先生が、初任者代替として授業に入ってくださっていました。その先生は授業のたびに、子どもたちにこう話してくれていたそうです。
「山崎先生はすごいんだぞ。君たちのために、ものすごく勉強しているんだ」
子どもたちがうれしそうに、そのことを私に話してくれました。まだ未熟だった私は、間違いなくこの先生の言葉掛けで支えられていました。
経験を語るのは素晴らしいことです。でも、自分の経験を押し付けると、初任者は意欲を失います。もちろん、初任者の多くが最初は「分からないことが分からない」ような状態ですから、手取り足取り教えるべきこともあるでしょう。でも、「自分が若い頃はこうやっていたから、同じようにやりなさい」と押し付ける指導になっていないか、よくよく考える必要があります。自分では押し付けたつもりがなくても、初任者には予想以上にプレッシャーがかかるものです。
初任者は失敗します。失敗をしたときに、周囲がどう接するかで、初任者の教師人生は変わっていきます。私が初任者の頃、主任の先生は私の失敗をこう言って笑い飛ばしてくれました。
「仕方ないわね~。山崎、一緒に手伝うわよ」
まさに、そこには受容がありました。受容がないことで、つぶれていった同僚もいます。ミスをしたときの指導は必要ですが、そこに受容がセットでないと初任者の心が持ちません。
受容と同じくらいに大切なのが承認です。教師は孤独な職業です。誰かに褒められることは少なく、子どもたちのためにただただ献身的に取り組む仕事です。だからこそ、せめて一番近くにいる指導者の先生こそ、その頑張りを承認してあげてほしいのです。初任者は、承認されるからまた何かにチャレンジできるのです。