前回、心理学の研究でHSPがどのように考えられているのかを紹介しました。すでにネットや書籍でHSPを知っていた方は、自分が知っているHSPの考え方とは違った説明のように感じたかもしれません。その感覚は正しいと言えます。なぜなら、ネットや書籍で説明されるHSPは多くの場合、学術上の考え方とはズレているためです。
実際、日本で広まったHSPの説明では、前回紹介した感覚処理感受性という用語がほとんど出てきません。そのため、もし皆さんの知り合いが「私はHSPなんだよね」と伝えてきた場合、それはおそらく学術的に考えられているHSPというよりも、社会で広く広まったHSPの考え方を表すものだと思います。
では、HSPはどのように広まったかというと、より「ポップ化」されて広まったと言えます。「ポップ化」されたHSPの考え方は研究に基づかないものが多く、娯楽としての心理学である「ポピュラー心理学」の様相を呈しています。以下の表は、ポピュラー心理学と学術的な心理学のそれぞれで説明されるHSPの特徴をまとめたものです。
ポピュラー心理学と学術的な心理学におけるHSPの理解の違い
先述の通り、ポピュラー心理学として社会に広まったHSPは、感覚処理感受性という心理学用語を基に説明されることがほとんどありません。その代わり、HSPはDOES(ダズ)が高い人と説明されるようです。DOESとは、刺激に対する深い認知的処理(greater Depth of processing)、刺激に対する圧倒されやすさ(ease of Overstimulation)、刺激に対する感情的・共感的反応の高まり(increased Emotional reactivity and Empathy)、ささいな刺激に対する気付きやすさ(greater awareness of environmental Subtleties)の頭文字をとったものです。感覚処理感受性の特徴を表す言葉なのですが、なぜかそうした説明がなされることがありません。
ポピュラー心理学としてのHSPは、全ての人間がHSPか非HSPかいずれかに分類できると考え、感受性の高さを全体的にネガティブに捉えるようです。一方、学術的な心理学では、感受性はグラデーションのように連続した特性であり、感受性それ自体はニュートラルなものとして考えます。
また、ポピュラー心理学では、HSPであることを「生きづらさ」や「疲れやすさ」などと積極的に関連付けますが、学術的な心理学では、HSPであることはポジティブ・ネガティブ両方の環境から「良くも悪くも」影響を受けやすい人と説明します。
さらに、ネットなどでは、HSS型HSP(刺激を求める傾向が高いHSP)や外向型HSPなどのタイプ分けやそのオンライン診断が人気ですが、学術的な心理学ではこのようなタイプ分けは基本的に行いません。