4月も中旬になり、いよいよ日常的に授業も開始している頃でしょう。実際に子ども相手に授業をしてみて、こんなことが起きていないでしょうか。
・子どもたちがザワザワしてなかなか話を聞かない。
・「先生、もう1回言って!」と言われる。
・なかなか指示が伝わらない。
こうしたことがなぜ起こるのか、実際に授業を見ないとはっきりとは分かりませんが、初任者の多くは「指示の出し方」に問題があります。指示の出し方一つで、授業や学級経営の安定度も変わってくると私は思っています。
例えば、有名な事例に次のようなものがあります。(向山洋一氏の講演より)
「算数の教科書を出して、25ページの3番の問題をやってください」
こう指示を出すと子どもは「先生、どこやるんですか?」と聞き返してきます。子どもが悪いのでしょうか。そうではありません。原因の一つは指示に情報が多く、子どもが処理できなかったからです。
この指示には、3つの情報が入っています。
①算数の教科書を出す。
②25ページを開く。
③3番の問題をやる。
このように一度に3つの情報を伝えてしまうと、子どもたちの中には処理しきれない子が出てきます。情報を処理する機能を専門用語で「ワーキングメモリー」(作業記憶)と言い、これに負荷が掛かり過ぎることで、指示が入らなくなってしまう子が一定数教室に生じてしまうのです。
では、どのような指示が良いのでしょうか。
「算数の教科書を出します。先生に見せてみて」
「25ページを開きます。隣同士で確認してごらん」
「3番の問題を指で押さえます。この問題を解きます」
このように一時に一事で指示を出していく必要があります。このことを向山氏は、「一時一事の原則」として著書で取り上げています。
指示の原則は他にもあります。
「確認の原則」→指示をした後、必ず確認をする。
「簡明の原則」→短く明確な指示を出す。
「全員の原則」→指示は全員に伝える。
「空白禁止の原則」→決して何をするか分からない、空白の時間をつくってはいけない。
これらの原則を意識して授業をするだけで、授業が第一段階として安定していきます。詳しくは、向山氏の著書『授業の腕を上げる法則』を読まれることをお薦めします。
子どもたちの動きが悪かったり、何か落ち着かなかったりするときには、その都度この原則に立ち返ることで、学級が安定します。そして、できない責任を子どもに押し付けることなく、教師自身の技量を高めることにつながっていきます。