【HSP・HSCの本質(4)】なぜHSPは人々を魅了したのか

【HSP・HSCの本質(4)】なぜHSPは人々を魅了したのか
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 社会で広まったHSPの考え方は、名状し難い「生きづらさ」をうまく代弁し、人々に受け入れられました。HSPという言葉と出合った人の中には「それまでの生きづらさがふに落ちた」と語る人もいます。事実として、HSPブームは一部の人々にとっては歓迎すべき現象だったと言えるでしょう。

 HSPが人々を魅了した背景には、HSPの持つ「物語性」があると考えられます。この物語性とは、繊細であることには「呪い」と「祝福」の両方が伴うというものです。つまり「繊細で生きづらいけれども、繊細であるために物事の良い側面にも気付いたり共感したりすることができる」という物語性を意味します。

 また、「障害」ではなく、気質や性格を表すラベルであったことも、人々が自身を説明するラベルとして受け入れやすくする要因になったのではないかと思われます。ただ、その背景には、障害に対する誤解や偏見が隠されているケースも見られます。一部のHSP自認者が持つそうした無意識のバイアスが、発達障害や精神疾患のある人々を苦しめているという側面も無視できません。

 さらに、世の中で説明される「HSPは5人に1人いる」という割合も、「HSPは私だけではないのだ」とHSP自認者を安心させる要因になったのかもしれません。SNSでHSPと検索すると、HSPを自認する人々と簡単につながることができます。実際、Twitterでは「#HSPさんと繋がりたい」のハッシュタグで、人々が交流する様子が見られます。

 血液型性格診断のような直感的に分かりやすいタイプ分けも、人々がHSPを受け入れやすくさせる要因になったのかもしれません。HSPのタイプ分けには科学的な根拠がありませんが、ネット上ではHSPのタイプ診断が人気です。HSS型HSPや外向型HSP、内向型HSPかどうかを診断してくれるチェックリストが、ネット上には数多くあります。その結果を基に、自身が○○型HSPだと自己理解し、それをSNSのプロフィール欄に記載するアカウントも多数見られます。

 冒頭でも触れたように、名状し難い「生きづらさ」に「名前」が付くという側面も、人々を魅了した要因として挙げられます。風邪と違い、心の問題は客観的に他者から見えにくく、それでいて原因が複雑です。その点で、自分にとっても他者にとっても説明しにくいものだと言えます。そこに、繊細さであることのポジティブな意味合いを持つHSPというラベルが与えられることで、HSP自認者は恩恵を感じているようです。

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