前回に続き、学級経営のUD(ユニバーサルデザイン)について具体的に解説していく。
離席・離室が激しい子どもに「どうして座らないの?」と聞くと、思いもよらない答えが返ってきた。「ぼく、本当は座りたいよ」と。衝撃だった。「座りたいけど座っていられない。だから、『多動性』と言うのだ」と、後にADHDの当事者から聞いた。そして、「多動性とは、パンツの中にアリが1匹入っている感覚なのだ」と諭された。見方を変えれば、「着席している状態」は頑張っていたのだ。配慮を要する子どもたちの「客観的に見ればできて当たり前」の行動の多くは、「努力の表れかもしれない」と「見方」を変える必要もありそうだ。
私たちは問題行動や「気になる」行動を目の当たりすると、つい叱って減らそうとする。しかし、まず大切なのは、「問題を起こしていない姿」「できている状態」を「頑張っている」と見方を変えて、それを伸ばし・増やす発想ではなかったのか。
①問題行動を叱って減らすのではなく、問題を起こしていない状態をほめて増やす逆転の発想!
②「できること」「得意」「良さ」に目を向けて、それらが発揮される!
佐藤愼二:『逆転の発想で 魔法のほめ方・叱り方』(東洋館出版社)
誰でも守れる約束を大切にする。ほめる機会を意識して増やす。言語環境の手本である教師のほめ言葉5S(さすが、すごい、すてき、すばらしい、それでいい)が増えれば、学級の雰囲気は確実に温かくなる。暴言への対応の根本も「暴言を減らそうとする以上に『温かな言葉を増やす』」という逆転の発想を大切にする。ほめる機会を増やすには、引き継ぎ情報に基づき、子どもの良さや得意が発揮される活動(当番・係活動や遊びも含む)を用意する。できたことが学級の中で認められれば、子どもの存在感や自己肯定感は確実に高まる。
ルール・約束を守らない子どもがいると、叱って減らそうとしてしまう。ここでも逆転の発想をする。ルール・約束を守っている場面、守っている子どもをほめる。周りの子どもたちをしっかりと育てることは、配慮を要する子どもたちも含めてお互いが手本になる学級づくりになる。ルールを守ると安心して気持ち良く過ごせることを実感し合い、確認し合う。
以上のような学級経営を基盤に、次回からは授業UDの具体的展開を検討したい。