ユース・メンタルヘルスの重要なテーマとして、ユースに身近な精神疾患を紹介する。精神疾患には多くの種類があるが、教育において大切なのは、個別の疾患を詳しく知ること以上に、多くの精神疾患に共通する特徴を理解することである。
精神疾患の症状には、それぞれの精神疾患に特徴的な症状があるとともに、多くの精神疾患に共通する症状がある。気持ちの面では、憂うつ、不安、意欲低下、悲観的考えが代表的である。体調にも変化が表れ、睡眠が悪くなり、食欲が低下し、体のだるさを感じる。そのため、笑顔に乏しく表情に元気がなくなり、声に張りがなく口数が少なくなる。毎日の暮らしでは、規則正しい生活、勉強への集中、友達との交流、外出しての活動が難しくなる。こうした多くの精神疾患に共通する特徴は、病気の全般的な調子の目安にもなる。
病気の経過も、多くの精神疾患に共通している。数カ月単位で徐々に始まり、経過の中で変動を示し、数カ月単位で回復が進む。突然始まったように見えても、以前からあった不調が急に表面に現れることが多い。大切なことは、そうした不調に本人が気付いていない、気付いても病気だとは思わない、病気だと思ってもどうしてよいか戸惑ってそのままになっていることが多いことである。この点が、精神疾患の特徴である。
精神疾患としてまず思い浮かぶのは、うつ病だろう。病気としてのうつに特徴的なのは、何も楽しくない、イライラと焦る、行動を起こせない、自分を責める、死にたくなるという気持ちである。そうした気持ちだけでなく、食べる気がしない、眠れない、だるくて疲れが取れないという、体調にも症状が現れる。物事をやり過ぎても疲れない時期が混じることもあり、後から躁うつ病(双極性障害)と分かることがある。
10代後半から多くなるのは、統合失調症である。特徴的な症状は幻覚と妄想で、自分の悪口を言う声が聞こえたり、誰かが自分に危害を加えると感じたりする。不特定の他人に悪意を感じるというテーマが、症状に共通している。幻聴の始まりから治療にたどり着くまで、1年近くかかってしまうことが多い。
最近増えたのが、摂食障害である。女子に多く、痩せを自分で認めなかったり、気付いてもさらに痩せたいと望んでいたりして、体力が衰弱してしまう。痩せていることを気持ちの支えとしていることが多い。
【参考資料】
・『はじめての精神医学』(ちくまプリマー新書)
・厚労省のサイト「みんなのメンタルヘルス」「こころもメンテしよう-若者を支えるメンタルヘルスサイト」「こころもメンテしよう-ご家族・教職員の皆さんへ」