【ユースの心と命を大切にする(3)】精神疾患教育のポイント-気付き・援助希求・支え合い

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 メンタルヘルスや精神疾患について、学校では何をどう教育すればよいのか。精神疾患教育の目標は、「行動が身に付く」ことである。

 精神疾患は、教科として学ぶ内容である以上に、生徒自身の問題である。自分は精神疾患を抱えている、そうなるのではと心配、友達のメンタルが気になる、家族の精神疾患で苦労している、という体験があることが多い。そういうとき、どうすればよいのか、その知識があるだけでなく、実際に行動ができることを目指す。ポイントは「気付き」「援助希求」「支え合い」の3点である。

 「気付き」は、精神的な不調に気付けることだが、これが精神疾患では難しい。不調を認めたくなかったり、自分の怠けと考えたり、気付いても我慢したりしやすい。気付きの手掛かりとなるのは、家庭での身の回りや学校での勉強や友達付き合い、課外活動や趣味という行動が、元気なときと同じようにできているかの振り返りである。

 気付きが難しいのは、精神的な不調が気持ちに表れるとは限らないからでもある。ストレスへの反応には3通りの表れ方がある。分かりやすいのは「心の反応」で、不安やうつになれば自分でも気付きやすい。次は「体の反応」で、腹痛や動悸(どうき)などの体調不良、手足の痺れ、声の出にくさなどとして表れる。もう一つが「行動の反応」で、リストカットのような自傷や乱暴な言動という形を取る。

 体の反応と行動の反応は、メンタルな反応であると本人が自覚できないことが多い。周りが指摘しても受け入れられないときほど、困難は深い。そうした3通りの表れ方があることを生徒に知ってほしい。

 「援助希求」は、SOSの発信である。つらいときや困ったときにSOSを出すことは、健康なときには簡単に思えるが、いざ心が不調になると恥ずかしさやちゅうちょのためにできなくなる。学校や家庭、地域で大人に助けてもらえた経験がない、精いっぱいのSOSをくみ上げてもらえなかった無力感が、その背景にはある。

 SOSを出す方法がたくさんあることを、生徒に知ってほしい。学校には担任・養護教諭・スクールカウンセラー、電話相談先には「こころの健康相談統一ダイヤル(0571-064-556)」「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」がある。生徒に身近なツールとして、LINEの「こころのSOS発信スタンプ」もある。生徒ごとに一番ハードルが低い方法を選んでもらいたい。

 「支え合い」が難しいと感じる生徒は多いが、友達の話を聞くだけで支えになることを知ってほしい。気付きと援助希求には周りの後押しが力になるし、必要でもあることに気付いてもらいたい。また、「伴走」という支え方にも、思いを致してほしい。

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