【ユースの心と命を大切にする(4)】精神疾患教育の教材と資料

【ユースの心と命を大切にする(4)】精神疾患教育の教材と資料
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 高校保健体育での精神疾患教育について、今回は利用できる教材や資料を、次回は授業における工夫と配慮を紹介する。

 教師向けの資料として、「指導ノート」などの名称の公式の教師用指導書がある。精神疾患には不正確な情報や誤解が多いので、専門家が協力して作成した資料が信頼できる。日本学校保健会が刊行した「精神疾患に関する指導参考資料」には、実際の授業の展開が例示されている。授業で利用できる教材として、日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業で作成されたものが、サイト「こころの健康教室サニタ」で公開されている。精神疾患についてのアニメ授業教材、当事者インタビュー、授業実施校インタビュー動画、解説集などが利用できる。

 高校保健体育における精神疾患教育について、さまざまな立場からの文章をまとめたものに、医学書院の雑誌『精神医学』2022年9月号の特集「学校で精神疾患を『自分のこと』として教育する」がある。授業教材や指導資料の開発の経緯、専門職が先駆的に取り組んできた「こころの健康出前授業」や「心の授業」の様子、当事者や親や兄弟姉妹の声、保健室の様子などが紹介されている。雑誌はネット上から購入できる。

 生徒向けのメンタルヘルス教材として、専門職が作成した冊子が公開されている。高等学校保健体育副読本の「うつむいているあの子のことが、このごろすこし気になる」、中学校保健体育副読本の「悩みは、がまんするしかないのかな?」、群馬県発行の「みんなは、悩んでないのかな?」はいずれも漫画仕立てで、生徒がメンタルヘルスに関心を持つきっかけとなる。いずれも冊子名で検索するとPDFファイルがダウンロードできる。

 ここで、精神疾患について多くの人から聞かれる質問に答えておきたい。本質的であるぶん答えが難しく、教材や資料に明記されていないからである。

Q:病気なのか、気の持ちようなのか?

A:精神疾患は「脳の不調と心の悩みの悪循環」と捉えるのがよい。その意味で、病気でもあり心の悩みでもある。生活の支障の大きさが、病気の程度の目安になる。

Q:原因を明らかにして取り除けば治るのか?

A:精神疾患に至る悪循環にはたくさんの要因が関係しているので、それぞれの要因への働き掛けが必要。一つの要因の改善だけでは解決とならないことが多い。

Q:薬で治るのか?

A:薬の役割は「脳の不調を整えることで、悪循環を逆転させるきっかけとなる」こと。それを出発点に、悪循環のさまざまな要因への働き掛けを進めていく。

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