本連載のまとめにあたって、UD(ユニバーサルデザイン)を実現する「学校組織としての計画的な取り組み」について言及したい。
配慮を要する子ども(良さ・得意を含む)の「ないと困る支援」をあらかじめ把握して、どの子どもにも「あると便利で・役に立つ支援」に発展させるUDは、まさに「事前支援」の理念・方法論である。その意味で、「引き継ぎ」は極めて重要な鍵を握る。短期的には、「読み困難」への「気付き」にも視点を当てた「就学時健診」の充実、進級に際しての「引き継ぎ」の徹底、それらを踏まえた「学級編制」などが挙げられる。また、中期的には幼保小・小中連携協議会などを含む校種間の接続と連携の充実を図る必要がある。「事前支援」は多忙を解消し、「特別」な支援にしないための重要な鍵でもある。
学習指導要領には、配慮を要する子どもの支援について「工夫を計画的、組織的に行うこと」とある。担任任せにしない計画的で組織的な対応が求められている。中でも重要な役割を果たすのは学年会である。具体的には、以下のような対応が求められる。
①「ないと困る支援」を学年会として「引き継ぎ」、入学式・始業式前までに「あると便利で・役に立つ支援」を検討する。
②学年会は各教室を輪番で会場とし、折に触れ、座席配置や子どもの作文・作品、教室環境などを確認し合う。
③テストの交換採点、合同・交換授業、部分的教科担任制、学年内相互参観などの「実質的な情報共有の体制」を学校「組織として計画」する。
「分かる喜びや学ぶ意義を実感できない授業は児童(生徒)にとって苦痛であり(中略)様々な問題行動を生じさせる原因となる」(小・中・高等学校学習指導要領解説総則編)という厳しい指摘がある。子どもにとって教室の仲間と授業は、紛れもなく学校生活の中心であり、より良い学校生活を実現したい。
近年公表された答申や審議会のまとめに「個別最適な学びと協働的な学び」という言葉がある。「個別最適な学び」の延長線上に「合理的配慮」が位置付くことは言うまでもない。そして、「多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重」(学習指導要領前文)することを目指す「協働的な学び」は、全ての子どもを包括しようとするUDの理念そのものである。学級経営と授業という原点に常に立ち返る不断の実践研究を怠りなく進めたい。
(おわり)