【ユースの心と命を大切にする(9)】学校メンタルヘルス連携

【ユースの心と命を大切にする(9)】学校メンタルヘルス連携
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 精神疾患教育は保健体育の教科で行われ、担当するのは保健体育の教員である。しかし、なじみのない精神疾患教育に、戸惑ったり重荷に感じていたりする教員が多いのではないだろうか。

 教科としては保健体育だが、学校で精神疾患やメンタルヘルスに向き合う機会が多いのは、むしろ養護教諭やスクールカウンセラー、教育相談担当の教員であろう。多忙な業務の合間にはなるが、そうした関係者に精神疾患教育の授業に登場してもらえないだろうか。

 授業に限らず、精神疾患やメンタルヘルス、その教育について、今後はさまざまな連携を広げることが求められるようになる。学校の中では、保健体育と教育相談担当、保健室とスクールカウンセラーの連携が必要になる。スクールソーシャルワーカーが配置されている学校では、連携がより進めやすい。

 学校と医療の連携も必要となっていく。校医として精神科医が配置されている学校はまだわずかだろうが、生徒の受診先としてだけでなく、精神疾患やメンタルヘルスの教育をどう進めるか、生徒や教員のメンタルヘルス増進をどう図るかなどについて、スクールカウンセラーと協働する精神科校医が必要となる時代が近づいていると感じる。

 精神科校医がいれば、メンタルヘルス増進についてアドバイスやヒントを得ることができる。筆者が以前、精神科校医として学校保健委員会に出席した際、小児科校医の肥満予防の話に続いて摂食障害による痩せ過ぎを説明し、話の方向性が逆であると印象に残った経験がある。精神疾患ですでに受診している生徒がいる場合は、主治医とどう連絡を取り、学校でどう配慮をすればよいかを相談できれば理想だろう。

 家庭との連携が必要なのは当然だが、とりわけ自傷や自殺未遂があったときに、家庭とどう連携するかは難しい。プライバシーの壁もあり、学校も家庭もどう対応すればよいかちゅうちょしがちだが、メンタルヘルス回復の大切な機会である。

「自殺の危険が高まった生徒への危機介入マニュアル」
「自殺の危険が高まった生徒への危機介入マニュアル」

 そうした場合の対応や連携を具体的に示したのが、群馬県教育委員会が公開した「自殺の危険が高まった生徒への危機介入マニュアル」である。「自殺予防について」「早期発見」「初期対応」「継続的な支援」の4章に続いて、「自殺未遂事案が発生した際の学校の対応例」と「ケース会議の進め方」として、危機管理としての連携の進め方が示されている。

 精神疾患やメンタルヘルスについての連携は、さらに地域とも進めていきたい。精神疾患教育の講師として地域の当事者や家族を招くだけでなく、メンタルヘルスについての地元の活動との連携が、「地域に開かれた学校」にもなる。フリースクールをはじめ、地域では生徒のメンタルヘルスについてさまざまな取り組みが行われている。

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