【 今求められる子どもの「居場所」とは(7)】居場所づくりは地域づくり

【 今求められる子どもの「居場所」とは(7)】居場所づくりは地域づくり
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 今回は「居場所づくりは地域づくり」というテーマで、子どもの居場所づくりと地域とのつながりについて紹介する。

 Learning for All(以下、LFA)の居場所は、地域住民とのつながりや協働も重視している。例えば、困窮家庭への食材配布を目的としたフードパントリーを、近隣の住民も自由に参加できる形で自治会や行政と共同開催している。LFAの居場所拠点に通う子どもも、本人が希望すればそこに運営スタッフとして参加できる。普段は支援を受ける側の子どもたちも、地域住民や行政と協働し、地域のために活動をしている。他にも小学生向けの居場所拠点では、季節ごとに行うイベントに地域からの協力がある。七夕の時期になると、地域住民が自宅の庭に生えたササを持って拠点に来てくれる。子どもたちは短冊に願いを込めて、そのササに飾り付ける。

 拠点の前にある小さな畑は、地域住民の知恵を借りながら土を入れ替え、野菜を植え、共に管理している。そして、収穫の時期にはみんなで採れた野菜を使ってバーベキューをする。また、地域住民がフードパントリーに参加したことをきっかけに子ども支援に積極的に関わってくれるようになり、自宅の庭の柿を子どもたちに提供してくれた上に、一緒に干し柿を作るイベントを開催した。地域と共に子ども支援を行うことで、子どもにとっては体験や学びの機会、社会参画の機会を得られる。と同時に、地域住民にとっては自分たちが住む地域に存在する「子どもの貧困」という社会問題を知り、何かしらのアクションを起こすきっかけになっている。

 このように子どもの居場所を地域に開き、さまざまな形で共に居場所をつくることで、地域の人たちができる範囲で協力してくれるようになり、地域の中に子どもの支え手が増える。そして、必ずしも「支援する・される」立場というものを固定せず、常に立場を循環させながら、みんなで支え合う「共助」が拡大していく。居場所づくりは「地域づくり」そのものである。

 子ども支援拠点は、一般的には子どもの個人情報やスティグマ(※)の防止のために、拠点の場所や運営の詳細は秘匿されていることが多い。そのため、地域住民がそもそも自分の住むエリアで子ども支援活動が行われているかどうかを知らないことも多い。子どもにとって安全な場をつくるためには重要なことであるが、それが地域社会から排除されている子どもや保護者の存在を隠し、地域社会が貧困問題について考える機会を奪ってはいないだろうか。子どもを誰一人取り残さない地域社会をつくるためには、地域全体で子どもを育てる姿勢が重要であろう。

 ある特定の人や集団が、いわれのない差別などによって社会的に不当な不利益を受けてしまうこと。

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