学校現場の情報化「致命的な遅れ」 中教審が論点整理案

初等中等教育の課題を横断的に議論する、中教審初等中等教育分科会の特別部会が9月4日、文科省内で開かれ、ICT環境や先端技術を活用した教育の在り方と、小学校高学年における教科担任制の導入を柱とする論点整理案が公表された。席上、ICT環境の整備について、堀田龍也・東北大学大学院教授は「学校現場の情報化には致命的な遅延がある。このままではSociety5.0に対応できない」と厳しい言葉で報告。学校現場での基盤整備を強く促した。

ICT環境について堀田龍也・東北大学大学院教授の報告を受けた中教審特別部会

論点整理案では、まず、教育の将来像として、▽子供の学び=多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、個別最適化された学び実現▽子供の学びを支える環境=全国津々浦々の学校において、質の高い教育活動を実施可能とする環境整備――とする2つのイメージを掲げた。

そのうえで、こうした教育を実現するために検討を深める事項として▽ICT 環境や先端技術を効果的に活用した教育の在り方▽義務教育9年間を見通した小学校における教科担任制の在り方▽教育課程の在り方▽教師の在り方▽高等学校教育の在り方▽外国人児童生徒等への教育の在り方▽特別支援教育の在り方――を挙げ、それぞれ中教審の部会や有識者会議などで議論を進めていくことを確認した。

続いて、ICT 環境や先端技術を活用した教育について、堀田教授が報告書を提出。

「学校現場の情報化は、諸外国に比べても大きく遅れている。このままではAIなど先端技術の恩恵を受けることは、ほぼ難しい。Society5.0の時代に合わせた教育を行っていくことも非常に難しい。学校現場のICT環境の整備を強く推進して、デジタル・トランスフォーメーションを進めていくことが重要だ」と強い口調で訴えた。

また学校現場の現実について、入学時の書類を例に挙げて説明した。学校では、家庭環境調査票や健康調査票を学校が配布し、保護者が手書きで記入して提出し、教員がPCで手入力し、学校が保管するアナログな手続きがいまでも行われていると指摘。これに対し、一般社会では、購買や予約サイトに登録するときには、初回利用時にユーザーがスマホなどで必要事項を入力すれば、データベースに登録され、その後は各種予約に自動的に反映されていく、とした。

堀田教授は「提出物に毎回住所を書くやり方は、もはや学校不信にさえつながりかねない」と述べた。

報告書では、先端技術を活用するために整備が必要な項目として、①学校の設置者である自治体が児童生徒1人1台の情報端末の整備を急ぎ、これを国が支援する②自治体が高速ネットワーク環境の整備を急ぎ、インターネットフル接続とクラウドを前提としたICT活用ができるよう国が支援する③無線LANの整備に向け、学校Wi-Fiなど公的基準の策定や自動認証などの推進母体を国が整備する④学習者用デジタル教科書をはじめ、デジタル教材・MOOCなどの良質な学習リソースの開発と提供⑤学校現場において学習ログを取得し、教材などの効果検証や教育ビッグデータの活用研究が推進されるよう学習ログに関するガイドラインを整備する⑥学習リソース間のデータ互換のために必要な情報の内容・形式・規格等について、学習指導要領に対応付けることも含めて国が標準化し、教材提供側のメタデータ付与を推進し、デジタルによる個別最適化を推進しやすくする――といった点を列挙した。

また、Society5.0に向けた教育内容や学習方法として①社会構造や就労状況の急速な変化に対応できるキャリアチェンジを前提に、自己の学びを組み立てながら学習を進める自己調整学習の能力を育成する②ICTを真に道具として扱う情報活用能力の育成と、深い学びの実現③WEBなどからの情報を適切に取り出す読解力、多くの情報を整理できる思考スキルの育成、そのために必要な個別最適化された学習訓練、学習ログの可視化とサマライズを踏まえた教員による指導を小学校段階から確実に行う④学級で共に学ぶことの意義や教師の役割の再確認⑤いつでも、どこでも、誰とでも学べるよう、教育の機会均等と質保証の推進⑥STEAM教育を推進するため、プログラミング教育を含む情報教育の強い推進と民間人材の登用を可能とする制度改革⑦ 個々の教員の職位・職能や都合に合わせた研修の整備と働き方改革の推進――を挙げた。

最後に堀田教授は「全ては基盤整備が前提になる」と強調した。

続いて意見交換が行われ、「自治体向けにICTの必要性がわかる事例をもっと展開する必要がある。財源問題はあるが、財源が少なくても整備が進んでいる自治体もある。自治体の意識を高めてもらわなければ、基盤整備は進まない」といった指摘が出た。