【コロナと学校】緊急事態宣言下 分散登校での再開通知

【コロナと学校】緊急事態宣言下 分散登校での再開通知
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 新型コロナウイルスの感染拡大で大型連休明けにも緊急事態宣言が継続される方向が固まる中、文科省は5月1日、学校の段階的な再開のガイドラインを示す通知「学校運営上の工夫について」を出した。ウイルスまん延の長期化を前提に、緊急事態宣言の対象区域であっても、分散登校によって感染リスクが高いとされる「3密」(密閉、密集、密接)を避け、学校を再開する道筋を示した。分散登校では、進路指導の配慮が必要な小学校6年生や中学3年生を優先させ、教師による対面での学習支援が特に求められる小学校1年生への配慮も求めた。また、音楽科、家庭科、技術・家庭科、体育科などの学習活動の一部や、運動会や文化祭、修学旅行などの学校行事は、3密を避けられないとして行わないことを明記した。

 文科省では、全国のほとんどの学校が臨時休校となる中、4月27日に中教審委員などの教育関係者と政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーの感染症専門家らで構成する懇談会を開き、科学的な根拠を踏まえながら、緊急事態宣言の対象区域であっても、学校活動が再開できる条件を探ってきた。懇談会は5月1日、「新型コロナウイルス感染症対策の現状を踏まえた学校教育活動に関する提言」を公表。文科省では、その提言内容を踏まえて、今回の通知を作成した。通知は丸山洋司・文科省初等中等教育局長名で、5月1日付で都道府県の教育委員会などに出された。

 懇談会の提言では「学校における感染リスクをゼロにするという前提に立つ限り、学校に子供が通うことは困難であり、このような状態が長期間続けば、子供の学びの保障や心身の健康などに関して深刻な問題が生じることとなる」と、現状では感染リスクがゼロとなる状態と学校教育の再開は両立しないと指摘。「社会全体が長期間にわたりこの新たなウイルスとともに生きていかなければならないという認識に立ち、学校における感染及びその拡大のリスクを可能な限り低減しつつ、段階的に実施可能な教育活動を開始」することが重要だとの見解が示された。

 この提言を受け、通知が重視したのは、3密の徹底的な回避。厚労省は3密を避けるため、▽他の人と2メートル以上の十分な距離をとる▽小まめな換気▽密集するような運動は避ける▽多人数での会食を避け、隣の人とは席を一つ飛ばしに座る▽会話をするときはマスクを着ける――などを求めている。これを学校現場に適用するため、通知では分散登校の導入を強調した。

 通知は、分散登校について、緊急事態宣言の対象区域とされ、学校が臨時休校している地域でも、ICTの活用と感染症対策の徹底を前提に、分散登校を行う日を設け、段階的に学校教育活動を再開することが重要であると明記。分散登校については「児童生徒を複数のグループに分けた上で、それぞれが限られた時間、日において登校する方法」と定義した。

 分散登校では、進路指導の配慮が必要な小学校6年生や中学3年生を優先させるよう求めた。また、最終学年以外では、教師による対面での学習支援が特に求められるとして、小学校1年生にも配慮するよう記した。

 実際に分散登校を行う時には、3密を回避するため、学級を複数のグループに分け、使用していない教室を活用するなど、「児童生徒の席の間に可能な限り距離を確保し、対面とならないような形で教育活動を行うことが望ましい」とした。児童生徒の席の間には、おおむね1~2メートルの距離を空けるように求めている=図1参照。

図:身体的距離を確保した座席配置のイメージ

 分散登校の工夫として、時間帯や曜日によって登校の対象とする学年や学級を順次変える方法=図2および図3参照=や、学級を複数のグループに分けた上で登校の対象とするグループを順次変える方法を例示した。

 分散登校によって、登校する児童生徒の兄弟姉妹である幼児や低学年の児童が自宅で一人になる可能性があるため、地域全体で子供の居場所づくりに配慮することも求めている。

 一方、3密を回避するため、一部の学習活動や学校行事を行わないことも求めた。具体的には▽音楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導、身体の接触を伴う活動▽家庭科、技術・家庭科における調理等の実習▽体育科、保健体育科における児童生徒が密集する運動や、児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動▽児童生徒が密集して長時間活動するグループ学習・運動会や文化祭、学習発表会、修学旅行など児童生徒が密集して長時間活動--を挙げた。

 分散登校で学級を複数のグループに分け、土曜日の授業や家庭学習の支援を組み合わせることになれば、教職員の人的な体制作りが課題になる。この点について、通知では「通常時とは異なる業務の発生も考慮した人的体制を確保する必要がある」と指摘。教職員の校務分掌の見直しや勤務日や勤務時間の適切な割り振り、外部人材の活用などで教職員の勤務負担が過重とならないよう留意することを明記。加配教員の活用のほか、新設した「学校・子供応援サポーター人材バンク」を使って、退職教員や学生など外部人材を学習指導員として積極的に登用することも求めた。教育職員免許状を保有する人材が必要な場合には、臨時免許状の活用も検討するよう促している。

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