子供の心身や家庭要因に注目 生徒指導提要会議がWG設置

 文科省の「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」の下に設置された、児童生徒の多様な個人的・家庭的背景を踏まえた指導の在り方を検討するためのワーキンググループ(WG)は9月16日、初会合を開いた。初回は発達障害、精神疾患について委員からの報告があり、学校現場の現状を踏まえた生徒指導提要の改訂への方向性が議論された。

 同WGでは、いじめの重大事態や暴力行為、不登校児童生徒、児童生徒の自殺などが増えている現状に、児童生徒の健康面や障害、家庭的背景などが影響している可能性が指摘されていることを踏まえ、学校と関係機関の連携などを中心に集中的な議論を行った上で、生徒指導提要に盛り込むべき事項を整理する。

 主査の野田正人・立命館大学大学院人間科学研究科特任教授は「このWGに課せられた多様な困難は、本当に筆舌に尽くし難い。しかも、その困難が横並びになっているということではなく、縦横に入れ込んでいる。例えばいじめの背景に、発達の課題や虐待の問題、子供の貧困など、いろいろなことが絡み合っている」と、提要の見直しに向けた課題を述べた。

オンラインで行われた「多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキンググループ」の初会合

 初会合では、笹森洋樹委員(国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター長)が、発達障害の特性の理解と配慮について報告。ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)のある児童生徒にとって、学校はストレスが多い環境であり、個人を学校(環境)に合わせる視点と、学校(環境)を個人に合わせる視点の両面が重要だと指摘した。

 また本人の困難さや不安を周囲が理解できず、適切な指導や必要な支援が行われない場合、不登校などの行動上の問題や身体的・心理的な問題が二次的に表れる可能性があるとした。こうした児童生徒は、場面や状況にそぐわない行動を取ることもあるが、注意や叱責(しっせき)で自覚を促すだけでは難しいとして、目の前で起きている行動だけでなく、きっかけや前後関係も含めて要因を分析することの重要性を強調した。

 岡田俊委員(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部長)は、思春期・青年期が精神疾患の後発年齢であることに注目。表情・活動性、自傷・いらだちなど行動様式の変化、仲間関係、体重、出席状況、成績低下などの兆候について、担任だけでなく養護教諭、スクールカウンセラーと連携し、行動変化をただしたりせず、その背景にある心理的状況に着目する必要があると指摘した。

 また家庭との連携を求められるものの、実際には困難であることにも言及。家庭内のケアの低さや、複雑な家庭状況が子供の情緒面の問題に影響していることが多いとした。さらに、子供だけでなく、担任を孤立させないために校内連携が必要で、学年主任や養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、管理職と話し合える枠組みを作ることが重要だと訴えた。

 オブザーバーとして参加した小野憲・国立教育政策研究所総括研究官は、学校現場の目線から「教員はその専門性に加え、個別支援も求められており、手を差し伸べるだけの時間的、人的な余裕がない。支援にあたり人的、時間的な保証が必要なのだということも提要で示すことによって、教委や国に求められる役割も見えてくるのではないか」と述べた。

 また「おかしいことに気付いても、具体的にどんな支援をしてよいか分からないときに、よく『しばらく様子を見ましょう』と言われる。こういう部分をみんなで観察していこう、こういう情報を集めよう、という具体的な部分がないまま先送りされ、手遅れになることも多々ある。先生方が現場で困る部分をうまく提要に盛り込めるとよい」と話した。

特集