英語の成績、デジタル教科書使用で向上 つくば市教委など共同研究

英語の成績、デジタル教科書使用で向上 つくば市教委など共同研究
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 茨城県つくば市教委や東京書籍などの研究チームはこのほど、市内の小中学校など計12校で行ったデジタル教科書に関する実証研究についての結果をまとめ、報告書を公開した。英語力に関してリーディング、リスニングともにデジタル教科書使用開始直後に比べ、成績が向上したことが分かった。研究チームでは今後、学習者の行動パターンの類型化などの研究を進め、デジタル教科書の使いやすさの向上などに役立てるとしている。

 実証研究はつくば市教委と東京書籍のほか、東北大学大学院情報科学研究科・堀田龍也研究室と、デジタル教科書向けのICTプラットフォームの開発などを手掛ける㈱Lentrance(東京都千代田区)が共同で実施。2021年10月から22年3月末まで、つくば市内の公立小学校6校、中学校5校、義務教育学校1校で行った。

 小学校の国語、社会、保健、中学校の英語、技術・家庭の各教科で、本文の朗読やより学びを深められる動画、ウェブなどにアクセスできるデジタル教科書を使用し、授業を実施。さらに英語は中学1年生を対象に、21年10月と22年2月における英検IBAのリスニングとリーディングの得点を比較した。

 報告書によると、リーディングの得点の平均値が267.55点から294.73点に向上。リスニングも245.12点から259.77点に上がった=図表①。研究チームは「得点の上昇にはさまざまな要因が考えられるため、効果と結論付けることができない」とする一方、得点差には有意な差が見られた。

 また、合わせて行った英語学習に関するアンケート調査では「教科書本文の音読練習をする」「単語の発音練習をする」といった項目でデジタル教科書の使用が増えたことに加え、「していない」の回答が減少した=図表②。さらに、英語の学習方法で「英語の発音練習をする」が59.5%から63.3%に上昇しており、研究チームは「学習者用デジタル教科書の導入により、発音練習や音読練習に対する意識が高まっていることが分かる」とした。

 

 一方、「教科書本文をノートに書く・写す」や「教科書のいろいろなページを見る」といった項目では、デジタル教科書の使用と紙の教科書の使用について、計測時期による大きな差はなく、「メディアの特性に応じて使い分けていると考えられる」と分析した。

 また、英語は他教科と比べ、ネーティブ発音による朗読音声の再生といったデジタルコンテンツの利用が多かったという。放課後や長期休暇中にも利用されており、授業中だけでなく、家庭学習での活用も確認できたとした。

 研究チームは今後さらに、学習上の意味のある操作と意味のない操作の区別や、学習者の行動パターンの類型化など、学習履歴データから学習の様子や学習者の特性を明らかにする研究を進め、教科書の内容やデジタル教科書の使いやすさの向上に役立てたいとしている。

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