公立学校の教員に支給される教職調整額を10%まで段階的に引き上げる給特法改正案が6月10日、参院文教科学委員会で賛成多数で可決された。近く参院本会議で可決され、成立する見通し。教職調整額の引き上げ時期の前倒しの検討を求めるなどの21項目の附帯決議も可決した。
公立学校の教員に支給される教職調整額を10%まで段階的に引き上げる給特法改正案が6月10日、参院文教科学委員会で賛成多数で可決された。近く参院本会議で可決され、成立する見通し。教職調整額の引き上げ時期の前倒しの検討を求めるなどの21項目の附帯決議も可決した。
来年度予算編成や制度改正に向けた「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案が6月6日、政府の経済財政諮問会議で示された。教師の人材確保のために、働き方改革のさらなる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進めるとし、2029年度までを緊急改革期間と位置付けて、時間外在校等時間の月30時間程度への縮減を目標として明記。
教員の処遇改善などに向けた給特法改正案が5月15日、衆院本会議で可決され、参院に送られた。教職調整額の引き上げなどを盛り込んだ当初案に加え、与野党合意による修正で、2029年度までに教員の時間外在校等時間を月平均30時間程度に縮減する目標などが明記された。
教職調整額を段階的に引き上げることなどを定めた給特法改正案を巡り、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の与野党は、2029年度までに時間外在校等時間を月平均30時間程度に削減する目標や、そのために必要な措置などを法案の附則に盛り込むことで合意した。5月9日の衆院文科委員会では石破茂首相も出席し、修正案に関する質疑も行われた。石破首相は法案で懸念点として挙がっていた教員の持ち帰り業務の把握について、実態があれば校長や教育委員会が把握し、改善への取り組みが適切に行われるよう「指導の徹底を図る」と明言した。
公立学校の教師の処遇改善などを盛り込んだ給特法などの改正案を巡り、4月16日に行われた衆院文部科学委員会の集中審議では、創設される「主務教諭」によって教諭の基本給が下がることを懸念する質問が相次ぎ、文部科学省は否定する説明に追われた。毎年1%ずつ段階的に給特法の教職調整額を引き上げていく一方で、特別支援学校・特別支援学級の教員に支払われている給料の調整額が2026年度から引き下げられることが明らかとなっているが、この日の質疑では、それ以外に引き下げられたり、廃止されたりする手当などについても追及された。
今国会に提出された給特法改正案に反対する教育関係者らの有志が3月14日、法案の問題点を説明する記者会見を文部科学省で開き、公立学校の教員にも労働基準法を適用すべきだと訴えた。有志の一人である小玉重夫白梅学園大学・白梅学園短期大学学長は「給特法自体がすでに、歴史的にみれば耐用年数を過ぎている法律だ。しかし、その思想を基本的に維持し、微修正していくという考え方が違うのではないか」と問題点を指摘した。
教員の処遇改善で懸案となっていた教職調整額の引き上げを巡り、阿部俊子文科相は12月24日、加藤勝信財務相との2025年度予算案の折衝に臨み、来年度に教職調整額を現行の4%から5%に引き上げるほか、小学校教科担任制や中学校生徒指導担当教師の拡充などで教職員定数を2190人改善することで合意した。教職調整額は30年度までに10%に引き上げるとともに、26年度から中学校で35人学級を実施するための定数改善を行う。
公立学校の教員の働き方改革を巡り、財務省は教員の平均時間外在校等時間を段階的に減らしていき、その年度の目標値を下回ることができたら翌年度の教職調整額を引き上げることを提案している。最終的に月20時の時間外在校等時間に相当する10%に達したら、時間外の勤務時間に応じた残業代の支給への移行を検討するとしているのも特徴だ。この案に対し、教職調整額を現行の4%から13%に引き上げて教員の処遇改善を図ろうとする文部科学省は反発。学校現場にも波紋が広がっている。財務省はなぜこのタイミングで、このような異例とも言える提案をしてきたのか。財務相の諮問機関である財政制度等審議会財政制度分科会で委員を務める土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授に、財務省案の意図を聞いた。土居教授は財務省案の狙いを、労働時間を減らし、教職調整額を上げながら、勤務の実態と給与の関係を少しずつ近づけていくことにあると指摘。残業代支給への移行は、達成したときの状況を踏まえて検討する「オプション」だとみる。
公立学校の教員の給与の在り方を巡り、文部科学省と財務省で対立が起きている。文科省は来年度予算案の概算要求で、教員の処遇改善策として、教職調整額を現行の4%から13%に引き上げることを盛り込んだ。これに対し財務省は11月11日に開かれた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会で、働き方改革を着実に進めることを条件に、教職調整額を10%まで段階的に引き上げ、10%に達した時点で時間外勤務に見合った手当(残業代)を支給する仕組みに切り替えることを提案した。同12日には、文科省が見解を公表し、財務省案に反論している。文科省案、財務省案の考え方を整理するとともに、それぞれの課題をQ&A形式で考えてみたい。
先の衆院選で与党が過半数割れとなり、議席を大幅に伸ばした国民民主党の政策が与党との協議を通じて実現する公算が大きくなっている。国民民主党はどのような教育政策を掲げ、新たな経済対策を反映する今年度の補正予算案や来年度予算案の編成に向けて、どういった教育政策の実現を図っていく考えなのか。国民民主党で参院国対委員長と子ども・子育て・若者政策調査会長として教育政策に携わる伊藤孝恵参院議員は11月6日、教育新聞のインタビューに応じ、「子どもたちにお金をかけなければ、日本はもう立ち行かない」と述べ、教育国債によって教育予算の倍増を図る方針を説明し、当面の経済対策として体育館の空調設置を求めていく考えを示した。給特法の見直しについては「党として賛否をまだ決めていない」とした上で、「教職調整額の引き上げは、諸刃の剣だ。働き方改革や教員増につながらないのならば、反対するべきではないかと思っている」と率直に明かした。
中教審答申を受けて、文部科学省では学校の組織運営体制の充実や教員の処遇改善策の一つとして「新たな職・級」の創設に向けた制度づくりを進めている。中教審答申では、「新たな級」は教諭の2級と主幹教諭の特2級の間に設け、現行の主任手当を支給されている教諭よりも高い処遇とすることが想定されている。しかし、これによって教諭の基本給が下がるのではないか、という懸念の声が上がっている。阿部俊子文科相は10月25日の閣議後会見で「新たな職の創設に伴い、『教諭』の職務・責任について変更を加えることは想定をしておらず、基本給の引き下げは考えていない」と否定しているが、あくまで教員給与を定めるのは都道府県・政令市だ。専門家は、こうした懸念を払しょくするためにも、教員給与を下げさせない仕組みを国としてつくれるかが重要とみる。
中教審答申を受け、文部科学省は来年度予算案の概算要求で、給特法の教職調整額を現行の月額給与の4%から13%に引き上げることを盛り込んだ。これにより、人材確保法による処遇改善で、一般行政職の公務員の給与と比べて教員の給与が最も優遇されていた水準を超える優遇分を確保する狙いがある。しかし、このロジックに異論を唱える研究者もいる。日本教育政策学会会長の中嶋哲彦愛知工業大学教授は、残業代を支払わない代わりに支給される教職調整額を、処遇改善を理由に引き上げるのは理屈が通らず、人材確保法が空文化しかねないと警鐘を鳴らす。
教師の処遇改善や働き方改革の加速化などを求めた中教審答申を受け、文部科学省は8月29日、盛山正仁文科相が本部長を務める「教師を取り巻く環境整備推進本部」の初会合を開き、「教師を取り巻く環境整備推進パッケージ」を取りまとめた。文科省は同日に公表した来年度予算案の概算要求で、給特法で定められている教職調整額を月額給与の4%から13%に引き上げ、これまで人材確保法によって最も高かった優遇措置を超える処遇改善の実現を目指す。
教師の処遇改善策などを盛り込んだ中教審「質の高い教師の確保特別部会」の審議まとめ案。審議まとめ案が示された特別部会の開催直前に記者会見し、教職調整額の引き上げについて「手段と目的が整合的ではない」と批判した立教大学の中原淳教授と、特別部会の臨時委員として、審議まとめ案に対しても検討すべき論点を意見書として出している(一社)ライフ&ワークの妹尾昌俊代表理事がオンラインで対談した。第1回では教職調整額の引き上げをはじめとする、大きな予算増を伴う改革の目的と手段の整合性を検証する。