【イエナプランの中学校(5)】探究的・協働的な学びを創る

【イエナプランの中学校(5)】探究的・協働的な学びを創る
【協賛企画】
広 告

 前回は本校(大日向中学校)の1週間のスケジュールを紹介し、サークル対話とその重要性について述べました。今回は「イエナプランのハート」と呼ばれる「ワールドオリエンテーション」(以下、WO)について説明します。

 本校で大切にしている3つのことの一つに「世界に目を向ける」があります。この「世界」とはグローバルな世界だけでなく、身近な地域や身の回りも含めた自分の外界、環境という意味です。そうした「世界」に目を向けて、生徒の興味・関心を起点にして行う探究的な学び、課題解決型の学び、教科の枠にこだわらない学びを創造していくのがWOです。

 WOでは、生徒が学びのオーナーシップを持って主体的に取り組みます。日本の教育課程で最も近いのは総合的な学習(探究)の時間になります。学習のプロセスは、イエナプランでよく用いられる①刺激する②問いを集める③計画する④探究する⑤発表する⑥記録し保管する⑦学習目標と照らす――という手順に従います。このうち「④探究する」ではホンモノに触れることや一次情報(実験・発見やインタビューによるものなど)を獲得して分析・考察することが求められます。

 本校では、これまでに幾つかのWOに取り組んできました。例えば「知ること、知ってもらうこと」では本校の周辺地域(大日向地区)を題材にして、社会科的な視点、理科的な視点などから身近な地域のことを深く理解し、発表しました。「めぐる一年」では地元の名産品・プルーンの栽培、収穫、仕分け、販売の一連の工程を体験し、なぜ佐久穂町はプルーンの栽培に適しているのかといった探究活動を行いました。「わたしの生」ではキャリア教育の視点で、自分の大切にしている価値や将来像を模索したり、職場体験に取り組んだりしました。本連載の第7回で紹介する運動会の企画立案・運営も、WOとして取り組みました。

ワールドオリエンテーションの活動(プルーンの収穫)

 このような実践を通して、生徒は「世界に目を向ける」だけでなく、主体的な学びを通して「自立する」こと、協働的な学びを通して「共に生きる」ことを力量形成しています。つまり、本校で大切にしている3つのこと全てに関係する学習になっています。WOはイエナプランで重視している子どもを中心に据えた教育の、まさにハートなのです。

 なお、教職員は事前に2~3日間をかけてWOのテーマは何にするか、刺激はどのようなものを提示するか、学びのプロセスをどうするかなどをじっくり協議してから生徒に提示します。今年度の1学期の「刺激する」では、教職員全員で演劇をしました(筆者が主役)。教職員も一緒に学びながら創っていく教育活動です。

広 告
広 告