【教師の仕事をデザインする(8)】 越境して学習する

【教師の仕事をデザインする(8)】 越境して学習する
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 今回から「自分を広げる」フェーズに入っていく。

 初任の頃から、学校外のいろんな場所で学ぶことが楽しかった。最初はただ不安だったから。新しいことを吸収してないと、いつか子どもたちに「この程度だ」と思われてしまうんじゃないか、学級崩壊が起きるんじゃないか、そんな不安と闘っていたのだと思う。

 ただ、ある時期から、学んでいるのは不安からではなくなった。学ぶこと自体が楽しくなってきたのだ。最初は、新しい方法を学び、教室で実践することが楽しかった。そして、学んだことを実行できることで、自分の在り方が変化していくのが楽しかった。在り方が変わり続けることで自分の人生が変化していくのが楽しく、学びが徐々に深まっていくのが分かった。

 このような学ぶことの楽しさは何によって生まれたのだろうか。その答えは「越境して学習する」ことにあったと思う。

 初任校を終える頃、会社員の方と学びを共にすることが多くなった。きっかけは、社会から10年遅れで入ってきた「PDCAサイクル」だった。社会では死語になりつつあったこの言葉が、研修や学校の至る所で聞かれるようになり、子どもの学びにまで使われるようになった。「そろそろ次の見方だよね」と社会では言われていたものが学校で広まっていく様子に、危機感を覚えたのだ。

 最初は性に合っていた「手帳術」や「文房具」の世界にハマっていった。近くの学び場で本を書いている著者と一緒になることがあり、ブログやタスク管理を学ぶことができた。

 3校目やオルタナティブスクールに移ってくる頃には、「0から1を作る発想」が役立った。『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』『ゆっくり、いそげ』『一緒に冒険をする』などの本は、ヒミツキチをつくっていく上で大事な発想を与えてくれた。教育じゃない畑の話に、「学校だったら」「教室だったら」と発想の橋を渡していくことが楽しかったのだ。

 例えば『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』には発酵の話が頻繁に出てくるが、それまでの発酵物に対する概念が、この本で大きく変わった。では、学校の中の「発酵物」は何だろう。すると賞味期限がある「掲示物」が思い浮かび、掲示物の捉え方が変わっていった。

 何より「教室だったら」はすぐに実行できる。

 もちろん、先生仲間と学びを深めた時間もボクには大事だった。でも、それと同じくらい外の世界に飛び出て学んだことは大きかった。

 いつも同じ人と出会い、同じ場所を行き来しているだけの先生に、社会のどんなことが語れるだろうか。「こんな面白いことあるよ」とワクワクしていたい先生は、ぜひ越境して学びを広げてほしい。

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