非正規教員問題と聞いて、読者がまず気になるものの一つはその数ではないだろうか。そして、すでに実際に調べたことのある読者もいるだろう。しかし同時に、「非正規教員とは一体誰なのか」という思いを抱いた読者も多いのではないだろうか。そこで今回は、誰が非正規教員として認識されているのかを整理した上で、その複雑さについて触れてみたい。
一般的には、正規の先生が産育休・病休などで休業する間のみ、臨時で勤務する期限付きの先生だと理解されているだろう。しかし、公的な統計調査などによれば、期限付きと一言で言ってもさまざまな形態が存在しているようである。
文部科学省の「今後の教職員定数の在り方等に関する国と地方の協議の場(第2回)」で配付された資料の中に、「公立小・中学校の教員定数と正規教員等の数について」整理されている。2021年度時点の正規教員は54万4765人、臨時的任用教員は4万2979人、非常勤講師等は9429人となっている。つまり、非正規教員とは臨時的任用教員・非常勤講師等の二者だとして理解しているようである。
一見するとイメージ通りかもしれないが、それぞれに付された注釈を見てみると、非正規教員の複雑さの一端に触れることができる。「臨時的任用教員」の注釈には、産休代替教員、育児休業代替教員、配偶者同行休業代替教員が含まれていないと記されている。産育休等の代替=非正規教員という一般的な理解からすれば、意表を突かれる。
また、「非常勤講師等」の注釈には、「常勤1人当たり勤務時間で換算」された数字であると記されており、実際に勤務している者の実数ではないことが分かる。このような注釈を付けている理由として、教育行政は教員定数をどのように満たしているのかが重要な関心事項であるため、標準法定数外の産休代替等を除いたり、非常勤講師等は換算数に置き換えたりしているのである。「非正規教員」という言葉は行政用語でも法令用語でもないため、統計調査などで公表されている非正規教員の量的実態を受け止める際は、その注釈まで確認することが重要になってくる。
非正規教員の複雑さの例は他にも挙げられる。教職員の実数を把握している「学校基本調査」には「職名別教員数」の項目がある。常勤講師や非常勤講師の職位は「講師」だと推察されるため、講師の実数を調べてみると、都道府県・年度によっては「0人」や一桁台が散見される。これは、常勤講師を「教諭」として発令しているケースだと考えられる。教諭にするということは給与を二級として扱うということであるから、非正規教員の待遇改善の一環として位置付けられる。しかし同時に、職位は教諭だが期限付きの非正規教員だという者も存在することになる。
これを機に、非正規教員とは一体誰を指すのか改めて考えていただければ幸いである。