第1回 「概念型探究」との出合い

第1回 「概念型探究」との出合い
【協賛企画】
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 私が公立小学校の教室で概念型探究を見よう見まねで始めたのは15年ほど前です。今振り返ってみると、本当に勢いだけでやっていたような拙い授業だったのですが、子どもたちの反応がとても良かったことが、私がここまで続けてこられた大きな原動力となっています。もともと一生懸命に取り組む子どもたちでしたが、学習活動に向かう姿勢が明らかに前のめりになり、学習感想の質も変わっていきました。「あぁ、学ぶことを本当に楽しんでいるんだなぁ」と強く思ったことを今でも覚えています。

 その後、大学院への進学を経て再度現場に戻ってきた私は、本格的に概念型探究を中心に据えたカリキュラムを実践していきました。そこでの子どもたちの変容は多岐にわたっていましたが、特に「書くこと」「対話すること」、そして「学びに向かう姿勢」が突出していたように思います。そして、それらの根幹を支える思考する力がぐんぐんと伸びていき、まさに「思考する教室」の中で伸び伸びと活動する子どもたちの姿が見られました。このような学びがもっと広がっていったらいいなという思いから研修講師活動を始めました。

 研修講師をしていると、探究に関して現場の先生たちの悩みを直に聞くことが少なくありません。その多くは、以下の3つに大別されます。

①そもそも、探究って何をどうしたらいいの?教科書や指導書がないから、どうすればいいのかよく分からない。

②取りあえず、学校のカリキュラムに沿って進めているけれど、子どもたちは本当に探究しているの?「やらされ感」たっぷりで、これでいいんだろうか…?

③「主体的・対話的で深い学び=探究」のようになっていて、それぞれの教科でも探究をやるように言われているけれど、それって今までの教科指導と何が違うの?話し合い活動をもっと入れればそれでいいの?

 概念型探究について理解を深めることは、これらの疑問の多くにおのずと答えを出してくれることでしょう。直接的に結び付くものもあれば、概念型探究を知ることを通して授業の組み立て方が見えてきて、解決の糸口が見つかることもあると思います。一口に概念型探究と言っても、その実践は多種多様です。教師、そして共に学ぶ子どもたちの実態によって、その姿は違って当然です。

 では、その概念型探究とは一体どういうものなのか。どのようにデザインしていけばいいのか。具体的な授業案とは。次回以降、そのあたりをひも解いていきましょう。

 

【プロフィール】

秋吉梨恵子(あきよし・りえこ) 「概念型のカリキュラムと指導」公認トレーナー、IB Workshop Leader、マイクロスクールGIFT School カリキュラムコーディネーター。公立小学校退職後、欧米の学校を訪問しながら、大学院で国際バカロレア(IB)について研究。日本の小学校初の初等教育プログラム(PYP)認定校で、PYPコーディネーターとして探究のカリキュラムをデザイン・実践する。現在は複数の学校で、探究を中心としたカリキュラムデザインや教員研修を実施している。

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