第7回 概念型探究のデザイン② 学んだ内容を応用する

第7回 概念型探究のデザイン② 学んだ内容を応用する
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 前回、「玉川兄弟」を例に挙げて、概念型探究のデザインについて述べましたが、「玉川兄弟」が成し遂げたことについて知ることと、「玉川兄弟」を通して「発展」や「貢献」についての理解を構築していくこととでは、当然のことながら単元の焦点が変わります。そうして焦点を変えて単元をデザインしていくことが、従来の授業から概念型探究へと切り替えるための重要なポイントとなります。

 では、実際にどのような事例を提示すれば、「発展」や「貢献」という概念への理解が広がったり、深まったりするのでしょうか。大切なことは「玉川兄弟」が玉川上水を造ろうとした背景や思い、玉川上水を造る過程での苦労や困難を乗り越えるための工夫は、全国各地でその地域の発展に尽くした先人と共通している部分が多分にあると理解していくことです。そして何より、これらは「昔の出来事」ではなく、現在もそのようにして地域の発展に尽くしている人物や組織が存在すること、小学4年生の自分たちにも学級や学校、家庭の発展のために貢献できることを実感するところまで学習の展開を設計することができると、パワフルな概念型探究の単元になるでしょう。

 このように「玉川兄弟」から学んだことを他の事例に当てはめたり、自分の生活に応用していったりする部分が、探究型学習のパーツを構成しています。「『玉川兄弟』はこうだったけど、私のおばあちゃんの家の周りでは誰がどんなことをしたんだろう?」「他の国でもこうやって地域は発展してきているのかな?」などの問いが生まれ、それぞれが新しい事例について調べていきます。複数の新しい事例についての情報が集まったところで、それを整理して「玉川兄弟」のパターンに当てはまるかどうかを見ていくことで、より本質的な「発展」や「貢献」に関する理解がつくり出されていくのです。

 そして、そういう先人たちの歩みの上に今の私たちの生活があることに気が付いたり、コミュニティー全体のことを考えた強い思いや願いが周囲を巻き込み、変革を起こしていくことに感銘を受けたりしながら、「じゃあ、自分たちには何ができるんだろう?」と考えていきます。

 この「自分たちにできることは何か」を追究していく部分に時間を割けるかどうかは、さまざまな事情が影響を及ぼします。だからこそ、概念型学習のパーツと探究型学習のパーツの割合はそれぞれの文脈によって変わってくるのであり、設計者の意図によって調整されることが肝要なのです。

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