高等学校学習指導要領(2018年告示)解説の「外国語編 英語編」には、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進がうたわれています。英語において、どのような学びが「主体的・対話的で深い学び」となるのでしょうか。「主体的な学び」や「対話的な学び」はイメージしやすいですが、「深い学び」はどうでしょうか。
「深い学び」のキーとされる「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは、「外国語で表現し伝え合うため、外国語やその背景にある文化を、社会や世界、他者との関わりに注目して捉え、コミュニケーションを行う目的や場面、状況等に応じて、情報を整理しながら考えなどを形成し、再構築すること」と説明されています。
前半部の「外国語やその背景にある文化を、社会や世界、他者との関わりに注目して捉え」という部分はレッスンのテーマに関わるものであり、教科書における全てのレッスンが「外国語やその背景にある文化」を扱っているわけではありません。だとすれば、「深い学び」においてより重要なのは後半部の「コミュニケーションを行う目的や場面、状況等に応じて、情報を整理しながら考えなどを形成し、再構築すること」であると私は考えています。さらに授業者が考えなければならないのは、どのような場面設定が学びを深いものにするのか、どのような情報の整理の仕方や考えの再構築の方法が学びを深いものにするのかについてです。
この「見方・考え方」に加え、私が「深い学び」を実践するにあたって理論的基盤としたのは松下佳代氏(京都大学教授)のディープ・アクティブラーニングです(ディープ・アクティブラーニングの詳細は『ディープ・アクティブラーニング』(勁草書房)や『深い学びを紡ぎだす』(勁草書房)を参照)。『深い学びを紡ぎだす』では藤原顕氏によって次のように書かれています。
「生活経験と接点のある教材で興味・関心を喚起しつつ、ペア/グループ活動を組織しながら、見通しを立て振り返りのある活動が位置づく授業をつくりさえすれば、学習者は学びの対象に必然的に深く迫っていけるわけではない」(藤原,2019,pp.119)
加えて、松下(2015)は深さの系譜を「深い学習」「深い理解」「深い関与」の3つに整理しています。「深い学習」とは「単に教えられたことを暗記してはき出すだけでなく、推論や論証を行いながら意味を追求しているか」、「深い理解」とは「事実的知識や個別のスキルだけでなく、その背後にある概念や原理を理解しているか」、「深い関与」とは「いま学んでいる対象世界や学習活動に深く入り込んでいるか」、と説明がなされています。