第4回 学校という職場の特徴

第4回 学校という職場の特徴
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 働く人のこころが苦しくなる理由は、働く環境にもあります。働く環境を理解することは、こころが苦しくなることを防ぐ力になるはずです。そこで今回は、学校という職場の特徴について、ストレスとの関係を含めて考えてみましょう。

 ストレッサー(ストレス状況を生み出す刺激)と働く人の関係性を理解することを助ける代表的なモデルに、米国労働安全衛生研究所による職業性ストレスモデルがあります。このモデルによると、働く人に影響するストレッサーは職場と職場外に分けられます。

 職場にあるストレッサーには、職場の物理的な環境、労働の量、質、裁量性、対人関係などがあります。職場外のストレッサーには親の介護の苦労、夫婦関係、育児の苦労などがあります。こうしたストレッサーによるストレス状況に影響を与える個人要因として、在職期間、性格、年齢や性別などがあります。そして、ストレス状況を緩和する要因として上司、同僚、家族の理解と支援があります。

 学校という職場を職業性ストレスモデルで考えるとどうでしょうか。学校には通常、職員のための休憩室がありません。学校の教員にとっては当たり前のことなのかもしれませんが、労働環境としては特殊です。加えて労働の量は膨大で、日本の教員の総労働時間はOECD加盟国中最長です。一方で、本務である教育、授業に割くことのできる時間は、総労働時間に比してOECD加盟国中最短で、それ以外の事務、課外活動指導に費やす時間が長くなりがちな状況があります。

 労働の質は複雑で高い水準を要求されやすいにもかかわらず、新卒採用1年目から担任を任され「一人前」を求められます。複数の対人関係の調整が必須なのに、5~6年に一度は異動し、そのたびに対人関係は大きく変化し、一から相談しやすい関係性をつくることが求められます。

 働く人のこころのケアはセルフケア、ラインケア、事業場内の専門職によるケア、事業場外の専門職によるケアの4つに分類されています。職業性ストレスモデルに基づいた研究によれば、働く人のこころのためにはストレス状況を緩和する上司や同僚からの支援が重要だと指摘されています。こうした研究結果を眺めてみると、ラインケアが生まれやすい職場をつくることの大切さを再認識することができます。そして労働の量が世界的に見ても膨大であることを知ると、学校の働き方改革に取り組むことの重要性に気付くことができるのではないでしょうか。

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