未成年者のオンラインゲームに関する消費者トラブルの相談件数が2018年以降増加傾向にあり、すでに支払ってしまった平均額が小学生で10万円を超え、中学生でも20万近くになっていることが、国民生活センターがまとめた報告書で3月5日に明らかとなった。スマートフォンが普及し、小学生年代などでも高額の消費者トラブルに巻き込まれるリスクが高まっている。
未成年者の場合、自ら事業者と多額の金銭を支払うような契約を行う機会は限られており、消費生活相談の件数や契約金額も少ない傾向にあったが、近年のスマートフォンやタブレット端末の普及によって、未成年者の消費者トラブルが増えている可能性がある。そこで、国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられた消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースから、2014~23年度までの未成年者の相談を分析した。
なお、改正民法の施行により、22年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられているため、14~21年度までは0~19歳を、22~23年度は0~17歳を対象としている。
小学生、中学生、高校生の各年代に分けて相談傾向を分析すると、いずれの年代も14~17年度にかけて相談件数が減少していた。
一方で小学生は18年度になると増加し、21年度以降は約2600件で横ばいが続いている。21年度以降は、「お試し価格」となっている健康食品などの広告を見て、契約内容に気付かず定期購入してしまうような「定期購入トラブル」の相談件数は減少したが、オンラインゲームの相談件数が増えた。
中学生は18~20年度で増加したものの、21年度の4255件をピークに再び減少が続いている。高校生も18年度に増加し、さらに19年度は顕著に増加した。20年度の7701件からは、再び減少傾向にある。中学生、高校生の場合、オンラインゲームの相談が増加しているが、その増加幅よりも定期購入トラブルの減少幅が大きいことが考えられるという。
オンラインゲームの相談に着目すると、14~17年度は減少しているが、18年度以降は増加傾向に転じ、23年度は8000件を超えている(=グラフ)。小学生、中学生は17年度以降増加し、21年度に一度減少したものの、その後再び増加。高校生は14年度、200件を下回っていたものの、年々増加し、23年度には500件を超えている。どの年代も20年度に相談件数が大きく増えており、コロナ禍で在宅の時間が増え、オンラインゲームをする機会が増えたことが影響しているとみられる。
23年度のオンラインゲームの平均契約購入金額は、小学生で24万1521円、中学生で33万8378円、高校生で37万2378円。実際にすでに支払ってしまった金額の平均は小学生で10万5741円、中学生で19万3366円、高校生で22万6032円だった。
国民生活センターでは、未成年者への消費者教育・啓発活動は、未成年者だけでなく保護者などにも実施していく必要があり、学校や教育委員会との連携、発達段階に合わせた啓発・注意喚起、人材と予算の確保などが課題だと指摘。行政による未成年者、保護者などへの消費者教育の推進をはじめ、ペアレンタルコントロールなどの適切な対策をした上での保護者の見守り、事業者が未成年者保護の趣旨を理解し、適切な対応を行うことが望まれるとしている。
【キーワード】
消費者教育 安全性や環境問題、契約など、消費生活に関する知識を習得し、適切な行動に結び付けることができる実践的な能力を育み、自立した消費者の育成を目的に行われる教育。消費者教育推進法に基づき、政府は消費者教育の推進に関する基本的な方針を定めている。
ペアレンタルコントロール 子どもが使っているスマートフォンなどの情報機器について、保護者が一定の管理をできるようにする仕組み。子どもの発達段階に合わせて、使い過ぎを防ぐための使用時間の設定や有害情報の閲覧制限、有料アプリのダウンロード制限などの設定をすることが推奨されている。