「まさか、あの一言でここまで大きくなるとは思いませんでした」
SNS炎上に関する相談を受ける中で、学校関係者から最もよく聞く言葉の一つです。実際、学校におけるSNSトラブルは、投稿者の意図や文脈に関係なく、「受け手」や「第三者」によって一気に拡大してしまうことが少なくありません。
現在のSNSリスクの多くは、主に三方向「教職員発」「児童生徒発」「保護者発」から生じています。例えば、教員がプライベートアカウントで不用意な発言をしてしまったり、児童生徒同士のLINEでのやりとりがいじめに発展したり、保護者が学校への不満を投稿してそれが拡散されたりと、火種はあらゆる方面に存在しています。
問題は、そうした火種が「外部に広がった瞬間に炎上と認識される」という点です。学校の中では大ごとだと受け止められていなくても、SNS上では「学校の対応の是非」が大きく論じられ、時にはメディアが取り上げる事態に発展します。投稿の出所や対応の初動、誰がどんな説明をしたのかといった点まで厳しく問われる状況が、すでに各地で現実に起きているのです。
私のもとには、こうした「思わぬ炎上」の相談が年間を通じて寄せられます。多くの場合、対応次第で未然に防げたものばかりです。未然防止が難しかった理由としては、学校内におけるSNSに対する共通認識の不足、形式的なルールしかなく現場に浸透していないこと、そして初動段階での情報収集や対応判断のばらつきなどが挙げられます。
今、学校には「教職員自身が発信者である」という自覚と同時に、「児童生徒や保護者もまた情報発信者である」という前提に立った備えが求められています。炎上のリスクを防ぐ上で、個人の自衛だけでは限界があります。学校組織として、SNSの投稿ルールやガイドラインの明文化、緊急時の対応フローの整備などをあらかじめしておくことが重要です。
SNSリスクへの対応に「絶対的な正解」はありません。しかし、起こり得る事態を見える化し、想定をしておくことで、ほとんどのトラブルは深刻化を防げます。私たちが今必要としているのは、SNSを恐れるのではなく、SNS時代のトラブルに備える「構え」と「体制」をつくることです。