本連載が最終回を迎えたため、私が最も大切だと思っていることを述べたい。それは、「対応」は「組織」ですべきだということだ。次の調査結果を見て、私は衝撃を受けた。
パーソル総合研究所「教員の職業生活に関する定量調査」(2023)によると「組織でクレーム対応を行っている」と前向きに答えた教師は、小中学校ともに55.9%であった。逆に言えば44.1%もの教員が、苦情を受けながらも「自分一人で対応している」と捉えているのだ。これは由々しき事態である。
本連載の読者の多くは、新任や若手ではなく、ミドルリーダーや管理職だと想定している。だからこそ、最終回であえて強く申し上げたい。保護者からの強い訴えに悩み、遅くまでその対応に追われ、明日の授業準備に手が回らないまま、それでも教壇に立って子どもたちの前で必死に笑顔を作っている先生をどうか一人にしないでいただきたい。「チーム○○小」と言えば聞こえはよいが、全ての教員が「組織に守られている」と実感できるような具体的な手だてをどれだけ講じられているだろうか。
私は主幹教諭として、前任校でも現任校でも「○○小基本ガイド」を作成し、さまざまな決まり事をA4用紙1枚にまとめ、4月の保護者会で配布している。私がこれを作成した一番の目的は、児童に決まり事を徹底していくこと以上に、学校全体としての指導の方針を保護者に明確に示すことで、この内容に関わるご意見には「学校として」答えていくことができ、その対応を教師個人が請け負わなくて済むようにすることだ。また、児童の生活に関わることだけでなく、例えば以下のような文言も入れている。
こう明記することで、教員個人の判断ではなく、学校としての判断で動いていることを理解してもらえるはずだ。また、働き方改革に関しても、コソコソと保護者に気付かれないようにするのではなく、
と宣言している。私はこのように学校としての覚悟を示すことこそ、「チーム○○小」という実感につながると確信している。
「○○小基本ガイド」の作成はその一例に過ぎないが、本連載のタイトルである「不安を信頼に変える『保護者対応』」は、教師個人で成し得ることではない。学校が組織としてその課題と向かい合うからこそ、「(保護者の)不安を(学校教育への)信頼に変える学校」になっていくのだ。(おわり)