皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。さて、今回のテーマは、前回に引き続き「特別支援教育」です。採用試験に出題されそうな新しい動きについて整理しておきます。
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まずは、前回も取り上げた「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(以下「手引」)です。前回取り上げなかった内容の中で、押さえておくべきは「発達障害」に関する事項です。
手引の中で「学習障害」「注意欠陥多動性障害」「自閉症」はそれぞれ、別掲のように示されました。「学習障害」では、「機能障害」を「機能不全」と言い換え、「注意欠陥多動性障害」では定義そのものが大きく見直されています。「自閉症」においては、「成人期に症状が顕在化することもある」ことが付け加えられています。
次に押さえておきたいのは、法令の改正関連です。2019年に文科省通知「学校における医療的ケアの今後の対応について」が出されましたが、これと関連して21年6月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が公布されました。ここでは、学校の設置者は、「その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずる」ことが規定されています。
この法律の施行に関連して、同年8月に学校教育法施行規則が改正され、学校の教職員の中に新たに「医療的ケア看護職員」が位置付けられました(65条の2)。医療的ケア看護職員は、日常生活および社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠である児童生徒の療養上の世話または診療の補助に従事するのが役割で、保健師、助産師、看護師、准看護師をもって充てることとされています。これにより、医療的ケア看護職員と教員の双方が「その専門性を発揮して児童生徒の成長・発達を最大限に促す」(※)ことが期待されます。
また、同規則の改正において、教育上特別の支援を必要とする児童の学習又は生活上必要な支援に従事する「特別支援教育支援員」が規定されました(65条の6)。21年8月の文科省通知「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について」では、その職務内容として、「基本的生活習慣確立のための日常生活上の介助」「学習支援」「学習活動、教室間移動等における介助」「健康・安全確保」「周囲の児童生徒の障害理解促進」を示しています。
さらに、同年9月に「特別支援学校設置基準」が公布されました。それまでは、学校教育法施行規則などに基づく施設・設備の整備が行われていましたが、特別支援学校の教育環境を改善する観点から基準が制定されました。特別支援学校を設置するために「必要な最低限の基準とするとともに、地域の実態に応じた適切な対応が可能となるよう、弾力的かつ大綱的な規定」(21年9月・文科省通知「特別支援学校設置基準の公布について」)としています。特別支援学校の学級編制については小中学部6人(重複障害は3人)以下、高等部は8人(重複障害は3人)以下とされていることや、学校に備える施設として、「自立活動室」の設置に注意しておきましょう。これらの編制・施設・設備の基準は23年度より施行されます。
※文科省通知「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(21年8月)
1.次に挙げるのは文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月)の一部である。空欄に当てはまる語句の組み合わせを選びなさい。
〇自閉症とは、①他者との( A )の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障害である。その特徴は3歳くらいまでに現れることが多いが、( B )期に症状が顕在化することもある。中枢神経系に何らかの( C )があると推定されている。
〇学習障害とは、(LD:Learning Disabilities):基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの要因による( C )があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、( D )が直接的な原因となるものではない。
〇注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):とは年齢あるいは発達に不釣合いな注意力又は衝動性・多動性を特徴とする障害であり、社会的な活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す状態である。通常( E )歳になる前に現れ、その状態が継続するものであるとされている。注意欠陥多動性障害の原因としては、中枢神経系に何らかの要因による( C )があると推定されている。
A B C D E
1.人間関係 学童 機能不全 成育歴 7
2.社会的関係 成人 機能不全 環境的要因 12
3.社会的関係 学童 機能不全 環境的要因 12
4.人間関係 成人 機能障害 環境的要因 7
5.社会的関係 成人 機能障害 成育歴 12
6.人間関係 学童 機能障害 成育歴 7
2.次に示す法令の空欄に当てはまる語句を選びなさい。
〇学校の設置者は、その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な( A )その他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律第10条第2項)
〇( B )は、小学校における日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいう。)を受けることが不可欠である児童の療養上の世話又は診療の補助に従事する。(学校教育法施行規則第66条の2)
〇小学部又は中学部の一学級の児童又は生徒の数は、( C )人(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由又は病弱のうち二以上併せ有する児童又は生徒で学級を編制する場合にあっては、三人)以下とする。ただし、特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合は、この限りでない。(特別支援学校設置基準第5条第2項)
〇高等部の一学級の生徒数は、( D )人(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由又は病弱のうち二以上併せ有する生徒で学級を編制する場合にあっては、三人)以下とする。ただし、特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合は、この限りでない。(特別支援学校設置基準第5条第3項)
A B C D
1.医療的ケア 医療的ケア看護職員 八 八
2.医療的ケア 学校看護師 八 六
3.看護・支援 医療的ケア看護職人 八 八
4.医療的ケア 医療的ケア看護職員 六 八
5.看護・支援 学校看護師 六 六
6.看護・支援 学校看護師 六 八
解答
1.解答2 解説:LDでは、医学的に同義ということで、「機能障害」の部分が「機能不全に」に改められた。ADHDでは年齢の基準が7歳から12歳になった。
2.解答4 解説:近年の法改正の部分である。確認しておこう。
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