皆さんこんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回は面接試験でも問われる重要事項として不登校とその支援について取り上げたいと思います。
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2020年度の不登校児童生徒数は、小学校・中学校とも増加しています。以前は横ばいで推移してきた小学校では13年以降増加の傾向がみられることや、中学校に入ると大きく増加することを傾向として確認しておきましょう。13年度は中学2年生で最大となりましたが、それまでは学年が上がるごとに人数が増加し、中学3年生で最大となっていました。
文科省が講じている不登校児童生徒への支援は、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(17年)と19年の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」を参照しておきましょう。通知の中では指針を踏まえて、不登校児童生徒への支援は、「児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」とし、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではないことを示しました。また、不登校の時期が「休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある」とする一方で、マイナスの影響として「学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスク」を示しています。同通知では、このような「不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方」を示した上で、学校での取り組みを5点挙げています。
このうち1点目は、「児童生徒理解・支援シート」の活用です。不登校の背景には、学校内の要因だけでなく、心理的な要因や医学的な要因、家庭環境や生育歴などさまざまな要因が考えられ、それらが複合している場合もあります。従って、心理の専門家であるスクールカウンセラーや社会福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーなどと連携・分担しながら対応することや、学校外の専門機関と協働して解決に当たることが必要となります。「児童生徒理解・支援シート」はこのような組織的・計画的支援のためのツールです。
2点目は「不登校にならないような学校づくり」についてです。未然防止の視点も重要です。「いじめ、暴力行為等問題行動を許さない学校づくり」や「児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮の実施」などが示されています。
3点目は「不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実」についてです。ここでは、予兆への対応も含めた早期支援、担任の視点からだけでなく、心理や福祉の視点からのアセスメントに基づく支援計画の策定、児童生徒への積極的支援や家庭への適切な働き掛け、不登校児童生徒の学習状況の把握と学習の評価の工夫、学級替えや転校などの弾力的対応などが示されています。
4点目の「不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保」については、教育支援センターやフリースクールなどの民間施設の他、ICTの活用や不登校特例校、希望による夜間中学での受け入れなどが示されています。不登校特例校はまだ全国で20校ほどではありますが、不登校児童生徒の実態を踏まえて、特色ある教育プログラムを実践しています。
5点目は「中学校等卒業後の支援」が示されています。
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面接で問われた場合には、通知の内容を踏まえて、具体的に自分の取り組み方を述べることが大切です。講師経験やボランティアなどで不登校対応の経験がある方も、連携・分担、協働ということを軸に回答できるようにしておきましょう。
2022第12回 問題編
1.次は,文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)の一部を基にしたものである。a~fに当てはまる語句を下の①~④から1つずつ選び,マークしなさい。
○ 不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,( a )に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や( a )自立へのリスクが存在することに留意すること。
○ 義務教育段階の学校は,各個人の有する( b )を伸ばしつつ,社会において自立的に生きる基礎を養うとともに,国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており,その役割は極めて大きいことから,学校教育の一層の充実を図るための取組が重要であること。
○ 不登校児童生徒への支援については児童生徒が不登校となった要因を的確に把握し,学校関係者や家庭,必要に応じて関係機関が( c )し,組織的・計画的な,個々の児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を策定することや,( a )自立へ向けて進路の選択肢を( d )支援をすることが重要であること。
○ 不登校児童生徒が,主体的に( a )自立や学校復帰に向かうよう,児童生徒自身を見守りつつ,不登校のきっかけや継続理由に応じて,その環境づくりのために適切な支援や働き掛けを行う必要があること。
○ 不登校の要因・背景によっては,( e )や医療機関等と連携し,( f )の状況を正確に把握した上で適切な支援や働き掛けを行う必要があるため,家庭と学校,関係機関の( c )を図ることが不可欠であること。
a ① 経済的 ② 職業的 ③ 精神的 ④ 社会的
b ① 才能 ② 能力 ③ 活力 ④ 技能
c ① 協働 ② 連動 ③ 連帯 ④ 連携
d ① 広げる ② 狭める ③ 提案する ④ 決定する
e ① 行政 ② 福祉 ③ 保健 ④ 精神保健
f ① 成育歴 ② 家庭 ③ 発達 ④ 友人関係
解答 a④ b② c④ d① e② f②
2.文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)で示された「不登校が生じないような学校づくり」の内容として適切でないものを選びなさい。
1.魅力あるよりよい学校づくり
2.いじめ,暴力行為等問題行動を許さない学校づくり
3.児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮の実施
4.保護者・地域住民等の連携・協働体制の構築
5.将来の社会的自立に向けたキャリア教育の充実
解答5 解説 5:「キャリア教育の充実」ではなく「生活習慣づくり」である。
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