る。ここでは、大学4年間を見通して、教員採用試験を受けるまでの行動計画を考えてみよう。
[1年生]
教員への気持ちを固める できることから始めよう
教育学部に入学したとしても、教員になると決めたわけではないだろう。他学部生なら、なおさらである。しかし、多くの大学では、新入生向けの「教職課程ガイダンス」を開いているので、少しでも興味があるのなら出席しておいた方がよい。
教員免許取得に必要な講義が1年生から履修することが可能ならば、早めに履修するとよい。4年生時は教育実習や採用試験の本番があり、かなり忙しいので必要な単位は早めに履修しておく。
大学によっては、教員を目指す学生が集う教職サークルが存在する。受験する仲間がいると心強いし、互いに面接の練習ができるなど試験対策としても便利。また、サークル出身の卒業生が教員になっている場合は、いろいろ有用な情報を得ることができるので、入会してみるのもよいだろう。
[2年生]
情報収集を積極的に 学校現場の実際を知ろう
大学では、教職課程登録に関するもの、教育実習や介護等体験に関するものなど、1年にわたり関連のガイダンスがいろいろと開かれるので、教員志望者はきちんと参加しておく。
自分が教員に向いているかどうかを自分なりに判断して、志望を固める時期である。教員になった卒業生などから積極的に話を聞く機会を持ち、現場の情報を得るようにしよう。
この点で最も役に立つことは、「学生ボランティア補助教員」として学校現場に行くことだ。ボランティアとして、小中学校などで授業の補助や部活動の支援などを行うわけだが、現代の児童生徒の気質や学校現場の実体を知ることができ、自分が教員としてやっていけるかどうかを判断するのに格好の機会だ。コロナ禍で中止していた自治体もあったが、事態が落ち着いてきたので、今年度からは実施されるものと思われる。
教育実習は4年生で行うが、ボランティアは1年生でも2年生でも可能。早いうちに体験しておくとよい。また、4年生で行くと、面接や論文の指導をしてくれる校長がいることもある。
大学の「教科教育学」は、学校現場の出身者(小・中学校教員をリタイアした人など)が講師を担当していることがよくあり、その中には実際に教員採用試験で面接官を経験した人も多い。こうした教員に出会うことができたら、ぜひ面接や論文の教えを請おう。最も心強く的確な指導をしてくれるだろう。
[3年生]
本格的な準備スタート 基礎力を付け実力につなげる
3年生は、本格的な準備スタートの年だ。
まず、教育実習の具体的な準備が始まる。次年度教育実習のためのガイダンスが行われ、それを受けて教育実習を希望する学校へ内諾交渉に行ったり、多様な書類の提出や手続きに取り組んだりしたい。介護などの体験実習も申請ガイダンスがあり、実際の実習も3年生に行われることが多い。
具体的な勉強はどのように進めるか。
4月からは教育に関するニュースをきちんとチェックすること。これは、試験直前まで行う。知識として覚えるだけではなく、それぞれの事項に関して「自分はこう考える」と意見をまとめるくせをつける。
こういう習慣が付いたら、次には過去の教育時事をさかのぼる。少なくても過去3年くらいの教育時事には通じておいた方がよい。
教職・一般・専門教養の筆記試験対策もスタート。3年生の夏くらいまでを「基礎力の養成」、夏から3年生を「実力の養成」、4年生の4月から実際の1次試験までを「総まとめ」などと3段階くらいに分けてステップアップを目指したい。手始めに中高校の参考書で勉強したり、教育六法、学習指導要領、各種答申など必要な資料をそろえたりして勉強を進めよう。
受験をする自治体を絞り込む時期でもあるので、志望の意思がある自治体の教員採用情報などを集める。志望自治体が固まったら、その自治体の過去問題3年分程度を入手し、問題傾向を分析しよう。
面接と論作文は慌てる必要はないが、前述のように教育時事などについては日々敏感に対応するようにしよう。論作文は書き慣れる必要があるので、3年生になったら月に2テーマ程度は書く練習をする。
面接マナーも付け焼刃で身に付くものではないので、普段からの立ち居振る舞いの中で意識するようにしたい。試験は夏に行われるので、7月になったらリクルートスーツを購入して、前年度から慣れておくのも一つの手だろう。
実技は、苦手なものがあったら、多忙な4年生になる前に克服しておく。例えば、水泳は2種類の泳法を求められることが多いので、前年の夏にはマスターしておくとよい。ピアノも同様である。
[4年生]
本番前のラストスパート実習を乗り切り総まとめを
実際の試験まで3カ月とちょっとである。ラストスパートしなくてはならない。また6月には教育実習がある。教職課程のハイライトであり、全力で取り組む。採用試験も、面接の模擬授業や場面指導、論作文で実習の経験が多いに役に立つ。実習中、余裕があれば、指導教官から面接などについて指導を受けられることもある。「教育実習中に注意する15のポイント」を表にまとめたので参考にしてもらいたい。
教育実習中に注意する15のポイント
▼教育実習期間中は、実習以外の予定を入れない。
▼教員としてふさわしい服装・髪型を心掛ける。
▼遅れないように早めに出勤。
▼自動車、オートバイなどでの通勤はせず、公共交通機関で通勤する。
▼勤務時間は厳守。やむを得ず遅刻、欠勤をする場合は出勤時間前に実習校に連絡する。
▼実習校の校則に従う。
▼連絡事項などの確認。黒板などを見て1日の流れを確認。重要なことはメモを。
▼所属学級の日程、動き、出欠状況など学級担任と確認する。
▼前日に提出した実習日誌を指導教官から忘れずに受け取る。退勤前に実習日誌を指導教官に提出する。
▼休み時間、掃除の時間などでは、子供たちとできるだけ交流する。部活動、サークル活動、児童生徒会活動などに参加する。下校時刻まで、子供たちと関わるようにする。
▼子供たちと積極的に関わるが、私的な交際は避ける。
▼実習校の施設、設備、教材教具などは必ず許可を得てから使用する。
▼1日の校務が終わったら、その日を振り返る。翌日の日程や準備するものなどを確認する。
▼授業のない時間に教採研究を行う。実習仲間がいれば、協力し合って行う。指導教官から積極的に指導助言を受ける。
4~5月には、募集要項の配布が開始されるので、確実に入手し、しっかりと読み込む。試験の日程、試験科目、募集人員、選考方法などをきちんと確認する。出願は6月中旬くらいまでが多いので、必要書類をそろえ、出願する。ここで遺漏があってはならない。
試験対策は、総まとめの時だ。教職・一般・専門教養の筆記試験対策は、これまで勉強してきたことを繰り返し学習して不得意をなくすなど総復習をしよう。教育時事のチェックは、直前まで忘れないことが大事。
論作文は、過去のテーマ、最新の教育時事などにつき、実際の制限時間、制限字数で何度も書いてみよう。面接は、受験仲間とグループを組み、集団面接、集団討論、模擬授業の具体的な練習を繰り返し行う。
試験直前で何より重要なのは、健康管理である。風邪をひいて実力を発揮できなかったり、また試験は夏なので暑さで体調を崩したり、ということがないようにしたい。万全の体調でこれまでに付けてきた実力を発揮できるよう体調管理に努めることが大事である。
4年間を見通した行動計画を表にまとめておいた。なお、ガイダンスのスケジュールなどは各自で確認する。
―大学4年間でどう勉強するか―標準的な参考例
☆1年生
・新入生教職課程ガイダンスに出席
・教員免許取得に必要な講義の履修(可能であれば履修)
・教職サークルなどへの参加
☆2年生
・教職課程登録ガイダンス
・教職課程の本格的なスタート
・先輩からの事情聴取―教員になっている卒業生を訪ねて話を聞こう
・学校ボランティアで学校へ行こう―学校現場へ行って貴重な体験をしよう
・大学教員からの事情聴取―現場出身の教員から現場の実態や採用試験について聞こう
・教育実習ガイダンス
☆3年生
4~6月
・次年度教育実習のためのガイダンス・教育実習を希望する学
校へ訪問
・介護等体験実習ガイダンス
・介護等体験実習
◎教育時事 チェック開始―新聞等で1年間にわたりチェック
◎教職・一般・専門 勉強スタート―基礎力の養成―過去問題
の分析や基礎的な問題集に取り組む
◎論作文
◎面接 面接を意識して日頃か
ら行動してみよう
◎実技
7~11月
・志望県の絞り込みとその情報収集
12~3月
・教員採用試験ガイダンス
◎教育時事 3年分の教育関連重要ニュースを整理―重要答申などそろえる
◎教職・一般・専門 実力アップを目指す―志望県の過去問題2~3年分に取り組む
◎論作文 論作文を書き始めよう―月に1~2本はテーマを決めて執筆
◎面接 受験仲間と面接の練習をしよう
◎実技 苦手なものがあったら年内に克服
☆4年生
4月
・募集要項入手
・教育実習ガイダンス
5月
・出願
・教育実習
7月
・1次試験
8月
・2次試験
◎教育時事 重要な時事の総まとめ
◎教職・一般・専門 総まとめで不得意分野を克服
◎論作文 試験先の制限時間に合わせて練習
◎面接 模擬授業や場面指導を想定して練習―教育実習先で練習させてもらう
◎実技 短期で集中的に練習