【保護者と信頼関係を築く(6)】「子どもの未来を見据える」という共通点での信頼関係

【保護者と信頼関係を築く(6)】「子どもの未来を見据える」という共通点での信頼関係
【協賛企画】
広 告

 7月25日に放映されたNHKの『スポーツ×ヒューマン』で、サッカー日本代表キャプテンである吉田麻也選手が紹介されていた。「苦しいときこそ真価を見せろ」と題された特集では、苦しいときいかに心を平静に保つことが大切か、切々と訴えていた。ワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦では試合へ向かうバスの中で、プレッシャーから強烈な吐き気に襲われていたという。アメリカの教育学者J・デューイが言うように、「学校は社会に出るための準備機関である」とするならば、社会に出たときにプレッシャーに押しつぶされないような人間にするため、時にはあえてストレスを与えることも必要かもしれない。

 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社 2018)で有名な国立情報学研究所の新井紀子氏は、将来の子どもたちの敵はAIだと指摘する。多くの仕事をAIが人間に取って代わってするため、これからの時代に必要な学力は臨機応変な対応力だと説いている。頑張って就いた仕事がなくなったとしても、また別の仕事を臨機応変に見つけられるような人材でなければ、未来の社会では生きていくのが厳しいと指摘している。

 我々教師が保護者との人間関係づくりに苦慮するような場面では、「子どもたちの未来」というキーワードが欠如している。価値観が多様化している現代社会と言っても、「他の子はいいから、うちの子を一番に!」という主張は間違っている。なぜなら、自分の子どもさえよければ何でもありという感覚があるだけでなく、そこには子どもたちの未来が描けていないからだ。未来を考えたなら、2番だった順位を無理矢理1番にすることなど何の意味もない。小学校で活躍した思い出など、社会に出ても大して役に立たないからだ。それよりも、苦しいときに折れない心を身に付けたり、臨機応変に物事を解決していこうとするしぶとさを得たりすることこそ、未来に向けて一番の財産だと言える。

 学校や教師に無理難題を言ってきたり、心ないクレームを向けたりする一部の保護者は、その大切な部分の理解が希薄である。自分の思い通りにすることが子どものためになると勘違いしている。子どもが苦しいときに、真価を発揮できないような人間に育てようとしているようにさえ見える。その大切なところに気付いていないから、自分勝手な主張になる。保護者と教師が信頼関係で結び付くためには、「子どもの未来」というキーワードが不可避である。

広 告
広 告