【子どもが本来もっているものを引き出す「しつもん」(1)】しつもんメンタルトレーニングとは

【子どもが本来もっているものを引き出す「しつもん」(1)】しつもんメンタルトレーニングとは
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 突然ですが、人は1日に何回自分にしつもんしているか知っていますか?「何からしようかな」「どれから食べようかな」「何を着て行ったらいいかな」など、実は行動を起こす前に自分に1日2万回もしつもんしているのです。

 これだけのしつもんをしながら動いているということは、自分に「どんなしつもんをするか」によって、行動そのものが変わるということです。

 この点に注目して、スポーツの現場で子どもたちが自ら考え、行動するしつもんのメソッドが生まれ、藤代圭一さんが体系化して誕生したのが「しつもんメンタルトレーニング」です。日本代表チームで活用されることもありますし、全国各地の家庭や教室でも活用されるなど幅広く実践されています。

「しつもん」の質が、思考や行動、結果の質を左右する

 しつもんが良質であればあるほど行動の質も向上するのであれば、学校なら学びの質、スポーツなら練習の質を高めることができると考えられます。具体的に以下の4点が指摘できます。

①しつもんの質が高まらないと、思考の質は高まらない。

②思考の質が高まらないと、行動の質も高まらない。

③思考の質が変わらないと、行動の質はすぐに戻ってしまう…らしい。

④結果の質を高めるには、しつもんの質や投げ掛け方を高めておく必要がある。

 そもそも学校は、授業をはじめ、無数のしつもんが飛び交う場です。そのような場で、もし、教師の行うしつもんの質が悪く、またしつもんに何の意図もなかったらどうなるでしょうか。きっと子どもたちは「自分は先生にコントロールされている」と受け止め、もともとあったはずのやる気をなくしてしまいます。

 実際、相手がコントロールされた感を持ってしまうと、指導が入らなくなります。指導が入らなくなると、教卓をたたく、怒鳴るといった力技で何とかしようとしてしまいます。仮にその場をしのげても、その後に何が起きるか。指導が入るようになるどころか、子どもたちを委縮させ、ひいては学校教育への失望感を募らせてしまうことになります。

 教師は至って真面目で正義感も強く、それ自体は素晴らしいことです。しかし、無為無策に(時には頭ごなしに)自分の正義感を振りかざして、質の低い言葉をまき散らしてしまえば、子どもたちが本来もっているはずの可能性にふたをしてしまいます。それは、新卒であろうと、中堅やベテランであろうと関係ありません。では、そうならないために、何をどうすればよいのか。

 本連載では、教育現場でのしつもんメンタルトレーニングの実践例を紹介します。子どもが本来もっているものを引き出すために活用いただけたら幸いです。

【プロフィール】

鎌田賢二(かまだ・けんじ)京都市立小学校教頭。しつもんメンタルトレーニングトレーナー。京都市小学校道徳教育研究会で「子どもが本来もっているものを引き出す」ための指導技術や教師の在り方を研究。光村図書出版の道徳教科用図書編集委員や大学などでの講演、他小・中学校への指導・助言、家庭教育学級を行っている。著書の『教えない指導』(東洋館出版社、共著)『最高のクラスになる漢字プラクティス』(東洋館出版社)は道徳授業や学級経営など明日から活用できる多くの実践や教師が元気になる内容を掲載している。

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