今回は書く力を引き出すためのしつもんについてです。連載をしている私自身、書くのが大の苦手でした。私が書いた小学校の卒業文集は、作文の悪い例として使うことがあるほどです。どうやって書けばよいのか、以前は自問自答する日々でした。それが今では書くことを楽しんでいます。
そんな自分が大切にしているポイントは観察です。実は作文する話題はそこら中に無数にあります。そして、観察して気が付くためにしつもんを活用します。
まず、「友達と遊びました」という一文を黒板に書きます。続いて全員に「この一文からどんなことが分かりますか?」としつもんします。
「サッカーしてたのかなぁ」「楽しかったんじゃない」「ゲームだったら2~3人かも」などという言葉が出てきますが、これらは全て想像です。実際に何をやっていたのか、この一文からは全く分かりません。でも、文章を書く際はこういう表現をたくさん書いてしまい、「これ以上書くことができない」と止まってしまうことがよくあります。
この一文では友達と遊んだことしか分かりませんが、語彙(ごい)の定着が弱いと、どうしてもこうした短い言葉で集約されてしまいがちです。だからと言っていたずらに語彙を増やせばよいものでもなく、できれば自分の中にある語彙で作文を仕上げたいものです。そこでしつもんを活用します。
「何人の友達と遊びましたか?」
「どんなことをして遊びましたか?」
「道具は使いましたか?それはどんな道具ですか?」
「そのときどんな気持ちでしたか?」
「友達はどんなことを言っていましたか?」
「どんなことを考えながら遊んでいたのですか?」
これらのしつもんに答えるだけでも、先ほどの一文を相当な長さの文章にすることができます。しつもんすることで、子どもは意外と書くことが多いことに気付きます。
「書けない」ではなく、多くは「書けること」に気付いていないだけなのです。上に示した例についても、しつもんに答えた後は、時間の流れに沿って書いていけばいいのです。「4対3で勝ちました」「給食を食べました」など結果しか書かない子がいるときは、ぜひこのようなしつもんをしてその過程を書けるようにしてあげてください。子どもはさまざまなことに気付き、書くことが楽しくなっていきます。書くことが苦手な子が、劇的に書くことが楽しくなることもあります。
昔は「生活綴方」という作文の在り方があり、日常を書いていくことが主でしたが、最近は論理的思考などを明確に表現することが中心となってきています。そのため、作文指導が難しくなってきている現状もありますが、隙間時間にしつもんを活用するなどして、ぜひ書く力を高めてもらえたらと思います。