前回までは「教師の学び政策」の経緯に触れ、「実践的指導力」や「資質能力の内容と過程」の重視から「教師の学び」が強調されるようになる中で、教員研修の在り方がどのように変化してきたのかを解説しました。実はこれらの流れに応じて、教師を対象とした研究の対象や方法も変化してきました。今回は、学術的な視点から「教師の学び」がどのように研究されてきたのかを解説します。
そもそも教師に関する研究の歴史は非常に長く、「教師の学び」が注目されるかなり前から「優れた教師は何が優れているのか」を明らかにしようとする膨大な研究が蓄積されてきました。その流れは3つの大きなまとまりで捉えることができます。
1つ目は、教師の「行動」を定量化・指標化することで、子どもの学習成果を高める教師のスキル(技術・技能)を明らかにした研究です。例えば、教師が子どもたちに語り掛ける際の「分かりやすさ」や「引き出し」の多さ、発問のタイプの豊富さなどが注目されました。そして、そのような行動を身に付けるためのトレーニング(例えば、模擬授業など)が重視されたのです。
2つ目は、教師の「思考」や「認識」を明らかにすることで、優れた教師は「何を知り、どのように考えているのか」を明らかにしようとした研究です。教師と子ども、子どもと子どもが関わり合う教室の状況は、予測不能かつ複雑です。その中で、優れた教師は何を「手掛かり」にして状況判断しているのか、その判断を支えているのはどのような知識なのかが注目されました。目に見える「行動」だけでなく、教師の内面に研究の視点が移ったことで、知識や態度を身に付けるための教員養成・研修の在り方が注目されました。
そして3つ目は、教師はどのような「場」や「環境」の中で優れた教師になっていくのかを明らかにしようとした研究です。教師の「行動」も「認識」も、根本的には教師個人を見ようとする視点に立っていますが、これらは同僚をはじめとする他者との関係性や教師が勤務する学校によって大きく左右されるはずです。この点に着目したのが、3つ目の研究の特徴でした。
以上の研究は現在も引き継がれていますが、いずれも「教師の学び」を対象にしてきた点は共通しています。むしろ、これらの研究は全て「教師の学び」に迫ってきたと言ってもよいでしょう。次回は「教師の学び」とは一体何なのかに迫りたいと思います。