今回は、子どもたち自身がしつもんによって、引き出される思いや考えが変わるということを紹介します。ここではワークをしてもらいます。3人一組になってもらい、AさんBさんCさんをそれぞれ決めてもらいます。そして以下のような場面設定をします。
AさんBさんCさんは、総合的な学習の時間で発表するための最後の詰めをしています。あとはタブレット端末で写真を撮れば完成。Aさんが「すぐ撮れるし大丈夫」と言うので任せることにしました。先生に提出するのは明日です。ところが、次の日Aさんは写真を撮り忘れてきます。
この場面設定の中で、BさんとCさんにはAさんに「なんで忘れたの?」としつもん攻めをしてもらいます。Aさんはそのしつもんに対して回答をしていきます。さあ、どうなるでしょう。
Aさんから「習い事があった」とか「電源がなくなっていた」とかいった話を聞くと、BさんCさんは余計に腹が立ってきます。「それならちゃんと充電しておいてよ」などとさらに文句を言いたくなります。
こうしたしつもんは、学校教育の中でも多くの教員がやってしまってはいないでしょうか。「なんで廊下を走ったの?」「なんで用意を忘れたの?」などとです。
このワーク、実はうまくいかなかった場面で「なぜ?」としつもんをすることで、子どもから言い訳を引き出そうとしていたのです。
実際の教室で、子どもから出てきた言い訳を聞いた後、思い切り叱ったことはないでしょうか。私は結構やっていたように思います。
できなかったことやうまくいかなかったことに視点を向けて、「なぜ?」と問うしつもんは効果的ではありません。次につながる思いや考えが出てこないからです。そこで「どうしたらよかったのかな?」というように、HOWのしつもんを投げ掛けます。
学校生活の中では、例えば体育のゲームなどでこのようなワークを行いながら「どうしたらいいのか」、すなわちHOWに視点をもっていくことの大切さに気付くようにします。ただし、気を付けてほしいのは、WHYは駄目なしつもんではなく、失敗においての効果的なしつもんにはならないということです。
WHYが大きな味方になるときもあります。例えば、初心に返るときに「なぜ~をしようと思ったのだろう」としつもんをすることは、意義や目的を再確認するのにとても大事です。
また、「なぜ、大谷翔平選手は二刀流で成功したのでしょうか」などは、うまくいったことの原因を考えようとするしつもんなので、回答は前向きなものが多くなってきます。しつもんによって答え方が変わるということが分かると、意図的に活用できるので面白いものがあります。