多くの教室で「いいところ見つけ」が行われています。低学年の帰りの会などでも、「今日のキラキラさん」というようなすてきな取り組みをよく見掛けますし、私自身もそのようにしていました。ところで、なぜ「いいところ見つけ」をするのか、考えてみたことはありますか。このことを説明するに当たって、次のしつもんに答えてみてください。
ゲシュタルトの輪
「皆さんは図を見たときに、右と左のどちらが気になりますか?」
心理学では有名な「ゲシュタルトの輪」というものです。大半の人は、一部が欠けている右側の輪が気になると言います。
人はどうやら欠けているところが気になるようです。人の嫌なところや自分にとって不愉快だと思うところに、自然とアンテナを張ってしまうものなのです。
赤ちゃんはお腹がすいたり、おむつが濡れたりすると泣きます。これはある意味、生命維持のためです。つまり、人は本来「嫌だな」とか「不愉快だ」というものに対して反応してしまうようにできているのです。そうならないようにする一つの手だてとして、「いいところ見つけ」をしています。
教師もそうです。つい子どもの欠点を見つけては、教師という立場でそれを正そうとしてしまいます。「子どもを更生させなければならない」などと心のどこかで思ってしまうのです(欠点というよりも教師である自分にとって「不快」と感じているだけにすぎないこともあります)。
学級経営においても、4月当初は子どもたちの様子を見ながらより良く進めていこうとするのですが、だんだん慣れてきたとき、意識していないと子どもたちの欠点を見つけて「ああだ、こうだ」と指導を始めてしまいます。そうなってくると、子どもたちのやる気を奪うのは目に見えています。ですから、教師と子ども、子ども同士でしつもんをして、トレーニングをする必要があります。そうすれば子どものあら探しをしなくてもよくなりますし、子どものやる気をそぐ場面も減らせます。その結果、ポジティブのスパイラルに転じさせることができるのです。
そこで、教師である自分たちにもこんなしつもんをしてみてはどうでしょうか。
・クラスの子どもたちは「いいところ見つけ」をしていますか?
・クラスの子どもたちのどんなところが「いいところ」ですか?
これらのしつもんを通して「子どもは未熟だから教師として更生しなくては」というような思い込みをいったん白紙にし、子どものいいところを思い浮かべながら進めていけばよいのです。これらのしつもんを時折行いながら、いいところ見つけを子どもたちと一緒に行い、自分自身も幸せの方を向いて楽しんでほしいと思います。