【授業理解を深める「予習」の指導 (3)】予習の効果とは?

【授業理解を深める「予習」の指導 (3)】予習の効果とは?
【協賛企画】
広 告

 今回は、英語学習での予習の仕方と授業の受け方の関連を調べた篠ヶ谷(2010)の調査研究を紹介します。この調査では、公立高校に通う1年生と2年生の計1148人に対し、予習でやっていること(英単語を調べる、自分なりに推測する、分からない部分を人に聞くなど)、授業中にやっていること(ノートにメモする、疑問点をチェックするなど)について回答を求めました。

 分析の結果、予習のやり方と授業の受け方の間に、統計的に有意な関連が見られることが明らかになりました。具体的に、「英単語や英文の意味を自分なりに推測しておく」「分からない単語の意味を辞書で調べる」といった予習をしておくことで、「重要な情報は何か、自分が理解できていないことは何かをチェックしながら授業を受ける」といったように、メタ認知を働かせながら能動的に授業を受けられるようになることが示唆されました。

 また、この調査では「分からない単語の意味を辞書で調べる」などのように、前もって知識を得ておくことで授業中のメモが増加することも示唆されました。ノートテイキングの研究では、同じノートを使って繰り返し学習すると学習の回数が増えるにつれてノートへのメモが増えていくことが示されていますが、この調査の結果はこうした先行研究とも整合性があると言えます。

 つまり、予習の段階で英単語や英文の意味を書き出しておけば、授業ではそうした情報を修正したり、新たな情報を書き加えたりできるようになると考えられるのです。一方で、英単語や英文の意味を自分なりに推測するだけだと、考えた内容を書き出してはいないため、「重要な情報は何か、自分が理解できていないことは何かをチェックしながら授業を受ける」といったように、メタ認知は促されるものの、ノートのメモの増加には直接つながらないのではないかと考えられます。

 英単語や英文の意味を調べておくといった予習は多くの教師が促していると思いますが、そうした予習が授業中の学習にどのような影響を持つのかについては、これまで実証的に検討されていませんでした。篠ヶ谷(2010)の調査は、こうした予習によって授業中のメタ認知やノートテイキングが促される可能性があること、予習の中で自分なりに英単語や英文の意味を推測しておくことでも、「重要なところは何か」「分からないところは何か」メタ認知を働かせながら、能動的に授業が受けられるようになることを示唆するものと言えます。

広 告
広 告