前回は、予習の効果を生起させるための働き掛けについて述べました。しかし、効果的な予習を実現する上では、予習と授業の対応を考えることも重要となります。こうした点に関連する研究として、今回は中学生の英語学習を対象に、教師の指導と生徒の予習実施の関連を調べたShinogaya(2017)を紹介します。
この研究では、教師の指導について、予習に関する直接的指導(「予習のやり方を指導する」など)を測定する質問項目と、深い理解を重視した授業方略(「教科書を読んだだけでは分からないような高度な内容を扱う」「生徒に自分の考え方を説明させる」など)を測定する質問項目を使用しました。また、生徒の学習に関する質問項目では、どのくらい予習しているかに加え、「予習は役に立つ」「予習をすると理解が深まる」など、予習に対する役立ち感と、「毎回の授業に向けて予習するのは面倒だ」など、予習に対する負担感を測定しました。
このようにして測定された変数間の関連を分析した結果、予習に関する直接的な指導によって、生徒の予習に対する負担感が下がり、予習の頻度が上がることが示されました。この結果は、どのように予習すればよいのかを教師が具体的に指導してあげることの重要性を示唆していると言えます。
そして、この研究で特に重要なのは、授業方法が生徒の予習に影響することが示されたことです。具体的には、教師が深い理解を重視した授業を行うことで、予習の役立ち感が高まり、その結果、予習の頻度が増えることが示されました。教科書を読んだだけでは分からない知識同士の「関連」や「なぜ」を授業で扱い、生徒にもその説明を求めるなど、深い理解を重視した授業を行う場合、予習をしないと授業が理解しづらく、逆に予習をすることで理解が深まることを実感しやすいと考えられます。そのため、このような授業を行うことで予習の役立ち感が高まり、予習が促されるのだと考えられます。
ただし、この研究では、深い理解を重視した授業が予習に対する負担感を高めてしまうことも示されており、この点には注意が必要です。授業で高度な内容を扱えば、それだけ予習してくることへの負担感が高まってしまうことは想像に難くありません。負担感が高まれば、予習の頻度は下がってしまうため、予習を促す上では、予習のやり方を直接指導してあげることと、深い理解を目指した授業をすることの両方を意識する必要があると言えるでしょう。