若手さん「グスッ、しくしく…仕事のことじゃないので、大丈夫です…」
ミドルさん「いやいや、大丈夫じゃないでしょ。どうしたの?」
若手さん「実は、祖母が病気になってしまって…心配で何も手につかないんです…」
若手教員と一緒に働いていると、時にこんな場面に立ち会います。若手に限らず、実は人知れず家族の病気や介護に直面していたり、私生活で大きな悩みを抱えていたりする人はいるものです。プライベートな悩みは積極的に職場で共有すべきとは言いませんし、あまり踏み込まない方がいい場合もありますが、ミドルリーダーと若手教員との関係も最後は「人と人」の関係です。苦しいときに先輩からの一言で救われたということも、実際にはあるものです。
私自身も、家族を亡くし「とてもじゃないけど仕事が手につかない」という時期がありました。そんなときに「よかったらお茶でも飲もう」と言って話を聞いてくれて、一緒に泣いてくれたり、ご飯に連れて行ってくれたりする先輩がいると「この人となら頑張れそう」「もう少し頑張ってみようかな」と前向きになれたものです。
本来ならば、仕事にプライベートは持ち込まないのが原則です。しかし、私生活がうまくいかないと仕事にも少なからず影響が出ます。子どもは敏感なので「なんか先生、今日ちょっと元気ないな…」と勘づくこともあるでしょう。だからこそ私は「頑張れないときも、職員室には居場所があるよ」「子どもたちのこと、落ち着いたら一緒に考えよう」という気持ちで、若手教員に寄り添いたいと思っています。日々の忙しさに追われていると仕事の内容のみに目が向いてしまいがちですが、目の前にいる若手教員も学校を一歩出れば血が通った一人の人間です。その背後には大切にしている家族や友人との私生活があることをミドルリーダーは常に意識しておきたいものです。
この連載でお伝えしたことは、私が知る限られた現場の、ほんの一部分の話に過ぎません。それでもこの連載が一人でも多くの「トイレの若手さん」を減らし、目の前にいる若手教員と向き合うきっかけになったらうれしく思います。若手教員が変われば、学校は大きく変わります。若手教員が自分らしく輝ける「誰一人取り残さない職員室」「誰一人取り残さない学校」が実現するよう、一緒に試行錯誤を重ねていきましょう。
(おわり)