【個別・協働・探究で学校が変わる(1)】自由でエキサイティングな学校

【個別・協働・探究で学校が変わる(1)】自由でエキサイティングな学校
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 東京都の離島に小さな公立小学校がある。この学校の4年生の学級はとてもユニークだ。学びの中心は探究学習。3月最後の金曜日に発表会が行われた。2年間にわたって取り組んできた探究はこの日、大きな節目を迎える。

 10歳の彼らが最後に取り組んだ探究テーマは「〇〇のプロになろう」。大勢の保護者が発表を見守っている。堂々と学びの成果を発表する彼らの姿はとても誇らしげだ。

 子どもたちがここ数年で取り組んできた探究テーマは多岐にわたる。「地元食材を使った新たな商品開発プロジェクト」「春の遠足コースをコンペで決定するプロジェクト」「学校の荒地を農園にするプロジェクト」「島に観光客を呼び込むプロジェクト」「島の夏祭りでバンドを結成するプロジェクト」。

 この学級の子どもたちは、10歳にして驚くほど自律的で豊かに学び合う。生き生きと学びに向かう彼らの姿を見ていると、子どもは本来学ぶのが大好きなのだということを再確認させられる。

 彼らが自律的に学ぶのは探究の時間だけではない。教科学習の時間は自由進度学習という方法を取り入れてきた。算数の時間には、ICT機器を活用して自分のペースで学びを進める。ワークショップ型の国語の学習では夢中で作文に取り組み、次々とユーモラスな作品を仕上げていく。社会のPBL学習では町の商店や工場に自ら電話をかけ、見学、取材を行う。総合的な学習の時間では自分たちでまきを割り、火を起こし、薫製を作る。絵が好きな子どもたちが描きためてきたイラストをパソコンで加工し、LINEスタンプにして販売したこともあった。

 この学級ではずっと前から宿題が出されていない。担任が宿題を廃止したからだ。それでも彼らの学力は驚くほど高い。教科平均で10ポイント前後高く、読解力は20ポイントも高い。何よりも学習している姿がとにかく楽しそうだ。そこには自由でエキサイティングな空気が満ちている。

 一体、この学級では何が起こっているのだろうか。

 私は2020年まで20年ほど、東京都の公立小学校で働いてきた。前述したのは最後の2年間で担任をした学級の様子だ。今は長野県にある日本初のイエナプラン校・大日向小学校でカリキュラムマネージャーを務めている。伝統的な教育を行う公立学校と進歩的な教育を目指す私立学校の両方に深く関わることで、教育というものを少しは俯瞰して見られるようになってきたと自負している。この連載では、私が学校現場で実際に行ってきた実践の数々と、その根底を支える理念の一端を紹介したい。

【プロフィール】

青山光一(あおやま・こういち)1977年北海道生まれ。伊豆大島・長野県の二拠点生活。元東京都公立小学校主幹教諭。在職中は「協働学習」「個別学習」「探究学習」「PBL学習」「イエナプラン教育」などを研究。2020年退職。同年、長野県にある日本初のイエナプラン校・大日向小学校のカリキュラムマネージャーに就任。株式会社先生の幸せ研究所のパートナーコンサルタントとして講演、小・中・高校、教育委員会への指導・助言を行う。伊豆大島で青山レモン農園・私塾を経営。

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