私は「保護者対応」という言葉が苦手です。保護者は「対応」する存在なのでしょうか。この言葉に違和感を覚えない時点で、もしかしたら保護者と良好な関係を築くことはできないとさえ思っているのかもしれません。
「保護者は共に子どもを育てる同志」と心から思えなければ、良い教育はできないはずです。きれい事と言われるかもしれませんが、私は常にそう思っています。
私が初任の頃、忘れられないエピソードがあります。学年末の最終日に子どもたちと涙でお別れした後、保護者の方々が駆け寄ってあいさつしてくださいました。
「山崎先生で本当によかった。最初は初任者と聞いてどうなるかと思ったけれど、先生は本当に熱心だったから」
「先生、すっごく立派になったけど、私たちが先生を育てたんだからね(笑)。先生、来年もがんばってよ」
大笑いしながらそう言って、背中を押してくださいました。保護者は敵ではない、味方なんだ、そう教えてくれた出来事でした。
そうは言っても、初任者にとって自分より年上の保護者と接することは、緊張もするでしょうし、どのように関わってよいか迷うことが多いと思います。拙著『教師1年目がハッピーになるテクニック365』(東洋館出版社)においても、具体的な保護者との接し方をいくつか紹介しています。
その一つに、保護者との連絡帳などのやりとりについての紹介があります。連絡帳にはおおむね、次の2つのパターンがあります。
①事務連絡(欠席、提出物など)
②相談連絡(トラブル対応、クレーム、質問など)
①は基本的に定型文で対応します。「承知しました」「お大事になさってください」などです。もちろん、心の余裕があるなら、一言その子が最近頑張っていることなどを添えるとよいでしょう。
問題は②です。丁寧に返すことが前提ですが、私は自分の文章力に自信がないため、原則文章では返しません。「ご連絡ありがとうございます。確認して早急に対応いたします」「放課後、お電話にて返答いたします」といった形で伝えます。
これは口で伝える方が、言葉の感情が乗せやすく、相手との心のキャッチボールがしやすいからです。また、学年主任や管理職と相談して対応できる点でもメリットがあります。保護者の相談連絡を扱うとき、何でも自分で解決しようとするのではなくチームで接することで、「保護者対応」から「保護者対話」へと変化させることができます。