信州大学大学院教育学研究科准教授。専門は比較教育学、教育行政学
10月、11月、12月生まれの子供はメンタルヘルスの問題を抱える割合が高い―― という、ノルウェーの大規模データから導いた分析結果が最近、公表された。データを見る限り、季節要因ではなく、学校や教育システムに関連すると研究者は見ている。
「画面から書面へ」の大転換が進むスウェーデンで、ナショナルテストのオンライン実施を全面的に中止することになった。政府は技術的問題と説明するが、デジタル化を止めようとする政府の思惑との関連を疑う人もいる。学校は代替テストの対応に追われている。
スウェーデンには、「バス幼稚園」がある。登降園用の幼稚園バスではなく、バスそのものが幼稚園のひと教室になっていて、幼児たちは街のあちこちに移動して1日を過ごす。元バス運転手ら2人のアイデアから始まったこの幼稚園は、保育スペースが不足する集合住宅地などで広がっている。ウプサラ市では現在7台のバスが幼稚園として運営されている。
スウェーデンには民間飛行場が約200カ所あり、多くの飛行クラブが活動している。飛行クラブといっても、小型セスナ機の操縦やアクロバット飛行、グライダー、ラジコン模型、ドローン、スカイダイビング、ヘリコプターなど、扱う機材や内容はバラエティーに富んでいる。1年間にわたって、自家用パイロット養成コースに参加し、生涯学習大国での特殊な学び場をのぞいた。
アテネオリンピックの走高跳で金メダルを取ったステファン・ホルムは今年5月に、近所の中学校で臨時教員を始めた。教員不足が深刻な中、空いている時間で学校に貢献しようと考えたのだ。しかし、出勤初日に、男子生徒の腕をつかんで警察に通報されてしまった。スウェーデンでは、この事件を巡って、教員の理不尽な労働環境を問う議論が盛り上がっている。
パンデミックは収束したが、最近のスウェーデンでは無断欠席が問題になっている。不登校やひきこもりも増えているが、学期中に家族旅行に出かけ、学校を無断で休む事例が増えているのだ。スウェーデンの暗くて寒い冬に、タイなどの暖かい国に出かけることが多いため、「タイムアウト(thaimout)」と呼ばれる。就学義務の解釈が自治体ごとに異なるため、政府も対応に頭を悩ませている。
スウェーデンの学校建築は、エリート教育から一般の子供たちへ、街の威信から機能重視へと大きく変遷してきた。材料は安価で手に入りやすいものになり、建物は画一化していった。その後、学校建築は機能より効率、そして多様化の時代へと向かう。スウェーデン人から嫌われる工場のような校舎、そして新しい校舎のユニークなコンセプトとは―。
スウェーデンの地方新聞には、使われなくなった地元の校舎を若い夫婦が買ってリノベーションして暮らしている、という話題がたまに取り上げられる。その地域に古くからあり、幼少期の思い出が染み込んだ建物を、次の世代が上手に活用しているのをほほ笑ましく見ている人も多いことだろう。
学力低迷に悩む多くの国では、質の高い教員を養成すれば児童生徒の成績にも好影響が出ると考えて、教員研修に投資をしてきた。しかし、先進国全体で見ると、職能開発は児童生徒の成績とほとんど相関が見られず、日本やスウェーデンを含むいくつかの国では負の相関があるという研究が発表され、波紋を広げている。
スウェーデンの先生たちは板書にこだわりがない。基礎学校のほとんどの教室は黒板ではなく、ホワイトボードが設置されている。黒板史から授業の変遷を見ていこう。スウェーデンでも、ベテランの教員の中には大型定規を使ってまっすぐ線を引き、丁寧な字でそろえて書く、といった「美学」を持つ人もいる。
6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、こども・子育て関係予算を「スウェーデンに達する水準」に倍増するとうたわれた。方針では、日本の少子化は待ったなしの瀬戸際にあり、これから6~7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだと指摘されている。
愛知県が「ラーケーション」を導入し話題になっている。「ラーニング」(学習)と「バケーション」(休暇)を組み合わせたこの造語は、公立学校などで平日に年間3日の休みが取れるようにする取り組みだ。子供たちが保護者と一緒に過ごす時間を増やしたり、学校外で学ぶ機会を作ったりできるほか、大人の「休み方改革」にもなると期待されている。
スウェーデンでは2023年から知的障害特別学校の名称を適応学校に変更する。「特別学校」という名称が「普通ではない」という意識を植え付けているという批判を受け止め、より柔軟な教育に向けて動き出そうとしている。世界的に高い評価を受けてきたスウェーデンの特別教育だが、その先にどのような学校像を目指しているのだろうか。
スウェーデンの学校では、全ての子供たちに給食が無償で提供されている。給食が始まった1800年代には貧しい地域の子供への生活支援だったが、1940年代には栄養面の基準が設けられ、1987年からは教育的な側面も加えた給食指導に発展してきた。さらに最近では、社会的な側面が注目されている。
4年前に始まった本連載も100回目を迎えた。この間、北欧教育研究会の多様なメンバーが「最前線」と銘打って、現地の教育や子育て事情について書いてきたが、一つの節目にあたって、北欧の教育との最初の出会いを振り返りたい。
スウェーデン政府はCOVID-19を「もはや社会的脅威ではない」として、4月1日から新型コロナに関する規制を撤廃した。スウェーデンの学校は、世界に先駆けてポスト・コロナ期に入った。最近の学校ではウクライナ情勢の話題で持ちきりで、パンデミックの記憶は薄れつつある。
ウクライナ情勢に伴って、多くの避難民が出ている。スウェーデンの学校でも子供たちの受け入れが始まった。移民庁は近いうちに9000人の子供を受け入れる必要があると見込んでいる。一方で、ウクライナ語の母語教員は全国に16人しかおらず、人道支援の先行きには課題も多い。
スウェーデン最北の都市キルナでは、大規模な引っ越しが始まっている。この街は鉄鉱山で有名だが、長年の採掘によって中心街が沈下し、住めなくなってしまった。そのため、現在の市街地から3キロメートルほど東に、約6000人の住民を転居させる。これは市の人口の約3分の1に相当するが、市役所や教会、学校や商店などの中心的な機能が移転されるため、ほとんどの市民が影響を受ける。
日本にも北欧にも、夏が来た。休暇を心待ちにしている人がいる一方で、夏期講習で「勝負の夏」を過ごす受験生もいるだろう。スウェーデンには受験はないが、それでも夏期講習にいそしむ若者たちがいる。そしてその数が近年増えている。いったい何が起こっているのだろうか。
スウェーデンのある高校では、2018年に顔認証技術を用いた出欠管理システムを導入した。これにより、年換算で1万7280時間分の業務が自動化できると試算された。これは、フルタイム教員10人分の年間業務量に当たる。しかし、この実験を進めたフェレフテオ市に対して、個人情報保護庁は生徒のプライバシーを侵害していると認定し、20万クローナ(約260万円)の罰金を科した。
国際学力調査などで評価の高いフィンランドは、そのブランド力を生かして「教育の輸出」を進めている。政府は国家戦略を策定し、幼児教育から大学、ノン・フォーマル教育から職能開発まで、120社を超える教育企業の海外進出を後押ししている。
スカンジナビア諸国では史料批判教育に力を入れている。情報ソースを批判的に吟味するための教育だ。フェイクニュースが飛び交い、SNSではうわさ話が瞬く間に世界中に広がる時代になった。子供たちも、幼いうちからウィキペディアやブログ、雑誌や学術書など、さまざまな媒体に触れるようになっており、早い時期から情報の正確さを見抜き、妥当性を見極める力を身に付けることが求められている。
北欧諸国の放課後活動の様子を紹介するこのシリーズ、3回目はスウェーデンのeスポーツを取り上げる。スウェーデンの子供たちの放課後活動といえばサッカーが圧倒的な人気で、フロアホッケー、乗馬、器械体操、水泳、テニスと続く。週に一度以上、運動をしている生徒は中学校で67%、高校生では74%に達する。ここに割って入るようにして、サブカルチャーとみられてきたeスポーツがメジャーになりつつある。
スウェーデンにはかつて、国立のボーディングスクール(寄宿制学校)が3校あった。 ストックホルムの北にあるシグチューナ校(SSHL)は1926年に創設され、現国王や元首相らが通った。ヨンショッピンにあるグレンナ校(Grennaskolan)は1963年に創設され、国際共修の先駆けとなった。
子供たちが使う家具には高い安全性が求められる。また、その多くは税金で購入されるために、ぜいたくは許されない。一方で、機能性を重視するあまり、無機質で味気ないものになったり、頑丈さを重視するがゆえになかなか壊れず、いつまでも買い替えられずに時代遅れになったりしてしまうこともある。
北欧の教室ではパステルカラーのソファやラグをよく見かける。いすや机の他に、バランスボールや足こぎペダルなども置いてあって、おしゃれでアットホームな雰囲気が感じられる。これらの家具はいつ頃から、どのようにして導入されたのか。おしゃれ家具の裏事情をお伝えする。
スウェーデンで初めて授業研究を行った教員団が、6月上旬に来日した。今回の視察目的は算数の授業の進め方について学ぶことだった。スウェーデンの教員は、日本の教室で何を見たのか。
スウェーデンで初めて授業研究が行われたのは2012年のことだ。ナッカ市の基礎学校で行われた公開授業には、近隣の教員だけでなく、学校教育庁の職員や教育学者など200人余りが会場を埋め、メディアでも大きく取り上げられた。それ以来、授業研究は全国の学校にじわじわと広まっている。最近では、現職研修や教員養成で授業研究の意義や方法を教わる機会も増えてきている。
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