組織開発ファシリテーター/合同会社ファミリーコンパス代表
「学習する組織になるには、どうしたらよいですか?」と聞かれることがあります。その答えは「学習する組織にしようとしないこと」です。
葵小では、特別支援学級を含めた全学年・全学級で、年間20時間ほど「対話」の授業を行っています。自分の内側に潜り、内省すること自体簡単ではありませんが、そこで感じた抽象的な感覚を言語化することはさらに難しくなります。それを小1から誰でも簡単に実践できるよう、私と教職員とで感情と願いが書かれた「ダイアログカード」を共同開発し、カードを使った対話の授業の指導案冊子を作成しました。それらを活用して、他校でも対話の取り組みを始める学校が増えてきています。
全ての教員が省察を深め、安心安全から分かち合える関係性を育んでいった葵小では、「教職員一人一人が幸せになる」を大前提として、数々の取り組みが共創造されていきました。
新任のB先生が新学期からずっとつらそうなことや教員同士の連携が取れていないことは、他の教員も気が付いていました。しかし、他学年のことに無責任な口出しもできず、見守るしかできなかったのです。そんなところにB先生が本音を話してくれたので、対話の場には「話せてよかったね」という安堵と承認の空気が流れていました。
「学習する組織」の実現を長年目指してきた市村淳子校長の熱い依頼を受け、2017年度から対話の取り組みを支援している京都市立葵小学校。初回の研修から組織内で起きていたリアルな課題「改革を進めたい派」と「もう限界派」の葛藤に教員全員で向き合い、お互いの願いに触れる深い対話を経験するなど「土壌」が育ち始めていました。
話し合いの場は、土壌と同じです。土が硬ければ種を植えても育ちにくいように、場の関係性の質が高まらないとどんなテーマを扱ったところで対話には向かいません。対話へ向かうプロセスを理解する手掛かりとして、「話し方と聞き方の4つのレベル」というモデルがあります。
組織変革の鍵は「変えよう」としないことです。対話は、変わることが目的ではありませんが、内省により気付きが起こり、想定を超えた大きな変容が多々起きます。
議論(ディスカッション)はパーカッションと語源が同じで、両者の意見の違いをたたいて分解し、一つの結論を出すことが目的です。一方、対話(ダイアログ)は、ギリシャ語の意味(ロゴス)を通す・流す(ディア)からきていて、同じ言葉や事象に対してそれぞれが持つ異なる多様な意味を分かち合い、理解を通すことを表しています。自分の無意識的な前提(メンタルモデル)に気付き、相手の意見や行動に対する解釈や評価のメガネを外して、その奥にある相手の「願い」を感じ取ることが「他者との対話」の入口です。
対話には3つの段階があります。内省を通して自分に気付きが起こる「自己との対話」、異なる意見の奥にある相手の「願い」に気付き(相互理解)、両者が満たされる第三の道を模索する(共創造)「他者との対話」、組織や社会の課題は自分もその構造の一部であり、当事者意識から変化を起こしていく「社会・世界との対話」です。
「教師も対話が必要なことは分かる。でも、対話したところで結局何も変わらないんじゃないの?」 そんな胸の内を先生方から伺うことがあります。多忙な毎日を送る教員にとって、対話の時間を取ること自体が難しく、意義や位置付けが不明確なまま「対話させられる」ことが苦痛を生むことはおかしくありません。
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