【全国学力調査】臨時休校の8割超 オンラインで授業を実施

 文科省は7月28日、小学6年生と中学3年生を対象とした2022年度全国学力・学習状況調査の結果を公表した。国語と算数・数学に加え、4年ぶりに理科を実施しており、各教科の平均正答率には学級閉鎖や臨時休校など新型コロナウイルス感染症の影響は見られなかった。同時に行った質問紙調査によると、1人1台端末を家庭に持ち帰って利用させている小中学校の割合が8割を超え、臨時休校が10日以上に及んだ小中学校で同時双方向型オンライン授業を実施した割合も8割を超えた。家庭への端末の持ち帰りや非常時のオンライン授業など、学校現場のICT活用が一気に進んでいる実態が浮かび上がってきた。一方、SNSや動画視聴を1日1時間以上行っている割合が小学生で約50%、中学生で約75%を占め、SNSや動画視聴を行う時間が長いほど各教科の平均正答率が低くなる傾向も判明した。

 22年度の全国学力調査は4月19日に実施され、小学校で1万8867校の97万8111人、中学校で9762校の92万8509人が参加した。コロナ禍による臨時休校や学級閉鎖などの影響で、5月20日までの後日実施期間に参加した小学校107校、中学校65校については、全体集計から除外している。また、児童生徒質問紙調査では、前年度に続いて端末によるオンライン回答を試行的に実施し、小学校1837校の10万4848人、中学校1023校の9万9244人が参加した。24年度にはオンライン回答の全面導入を予定している。

「情報の扱い方」「データの活用」に課題

 今回は、新しい学習指導要領が実施されてから小学校で2回目、中学校で初めての全国学力調査となった。各教科別の結果について、文科省では「改善の傾向が見られたものがある一方で、過年度の調査で課題とされた内容に関し、課題が認められるものがあった。このほか、学習指導要領で改善充実された内容に係る出題に関して、課題が認められるものがあった」(総合教育政策局調査企画課)と総括している。

 具体例として「国語で自分の考えが伝わる文章になるように根拠を明確にして書くこと。数学でデータの特徴や傾向を読み取ること。理科では、科学的な探究の過程で問題を見いだしたり、考えの妥当性を検討して、改善したりすることなどに課題がみられている」と指摘。現行の学習指導要領で国語に新設された「情報の扱い方」や、算数・数学に加わった「データの活用」などを課題として挙げている。

 こうした課題が見られたり、問題が難しかったと指摘されたりしている背景について、出題に当たった国立教育政策研究所の鈴木敏之次長は「新しい学習指導要領では科学的に探究する学習が極めて重視されており、今回の問題では、理科を例に挙げれば、批判的思考に基づいて話し合い活動したり、結果が予想と異なった場合を想定して観察実験の計画をどうするか考えたりする内容が含まれている。通り一遍の観察実験の状況とは異なり、教科書にもあまり載っていないような場面設定をしている。これは望ましい授業の在り方を示したいというメッセージの意味で、やや高めの球を投げたもの。それが結果にも表れている」と説明。

 さらに「総じて授業改善は一定程度進んではいるものの、やはり教員の力量の差による違いが大きくあろうかと思われる。教科書に沿ってやるところまでは多くの教員が頑張っていると思うが、今回の問題で出したようなスタイルで、子供たちに主体的に探究させるところまで踏み込めているかというと、そこはまだ道半ばだろう。このデータをよく分析して、手だてを考えてほしい」と述べ、学習指導要領に沿って探究型の授業改善をさらに進める必要があるとの見方を示した。(各教科の解答状況と分析:【全国学力調査】学習指導要領の新規内容に課題 22年度結果

 児童生徒への質問紙調査では、授業で課題の解決に向けて自分から取り組んだと答えた割合が小学校で77.4%、中学校で79.3%となり、昨年度とほぼ横ばいだった。学校への質問紙調査では、児童生徒が話し合い活動を通じて考えを深めたり広げたりできていると答えた割合が小学校で81.0%に増え、中学校でも86.4%だった。こうした主体的な学びや協働的な学びに肯定的な答えをした児童生徒や学校は、各教科の平均正答率が高い傾向を示している。

 また、学校への質問紙調査によると、コロナ禍の影響による臨時休校の日数は、長期休校に見舞われた20年度では小中学校ともに「50日以上、60日未満」が最も多かったが、21年度は「10日未満」が小学校94.7%、中学校94.4%だった。臨時休校の日数を各教科の平均正答率とクロス集計したところ、相関関係はみられなかった。

家庭への端末持ち帰りが定着

 22年度の全国学力調査では、学校のICT活用が一気に進んでいる現状と課題が多角的に浮かび上がってきた。

グラフ1

 GIGAスクール構想によって21年3月末時点で全自治体の96.5%で児童生徒の1人1台端末が整備され、21年度に端末の本格活用がスタートしてから1年がたった時点の調査となり、児童生徒への質問紙調査によると、前年度までに受けた授業でパソコンやタブレットなどのICT機器を「ほぼ毎日」使用したと回答した割合は小学生が21年度から15.5%増えて26.9%に、中学生が同じく14.5%増えて22.4%になった。週1回以上使用している割合は、小学生で83.3%、中学生で80.7%と、いずれも8割を超えた=グラフ1

 一方で、授業での端末使用の頻度が月1回未満と答えた割合も小学生で5.1%、中学生で5.2%あった。児童生徒の20人に1人が、1人1台端末を使った授業をほとんど受けていないとみられる。

グラフ2

 家庭への端末の持ち帰りも定着してきた。学校への質問紙調査によると、平時から端末を家庭に持ち帰って利用させている割合は、小学校で21年度の20.7%から66.7%に、中学校で同じく22.0%から62.1%に急増した。臨時休校など非常時だけに端末を持ち帰りさせている割合が小学校で18.9%、中学校で20.4%だったので、平時と非常時を合わせると、小学校の85.6%、中学校の82.5%が1人1台端末の家庭利用に対応できている=グラフ2

グラフ3

 さらに、21年度にコロナ禍の影響による臨時休校の日数が10日以上と回答した学校について、休校中に同時双方向型のオンライン授業を実施したかどうかをクロス集計したところ、8割以上の学校が同時双方向型のオンライン授業に対応できていたことも分かった。10日以上の臨時休校を行った学校では、小学校970校のうち86.1%が、中学校536校のうち83.4%がそれぞれ対応していた=グラフ3。多くの学校で、必要に応じて同時双方向型のオンライン授業ができる環境が整ってきたことが読み取れる。

 授業におけるICT活用の場面についても、学校への質問紙調査で新たに聞いた。最も活用が進んでいるのは「自分で調べる場面」で、週1回以上使っている割合は、小学校で92.1%、中学校で87.3%に達した。「教職員と児童生徒がやりとりする場面」では同じく小学校で72.1%、中学校で70.8%。「自分の考えをまとめ、発表・表現する場面」では同じく小学校で71.6%、中学校で73.4%だった。「児童生徒同士がやりとりする場面」では、同じく小学校で59.2%、中学校で55.3%となり、他の活用場面に比べて使っている割合が少なかった。

 こうした授業でのICT活用が、学習効果にどのように関わっているのかが気になるところだが、「自分の考えをまとめ、発表・表現する場面」でのICT機器の使用頻度と各教科の平均正答率をクロス集計したところ、相関関係はみられなかった。ただ、「ほぼ毎日」と「月1回未満」の平均正答率を比べるとわずかに差がみられており、文科省では、今後、指導方法など詳細な分析を行うとしている。

 また、一人一人の児童生徒に合わせた個別最適な学びの実現に向け、学校現場が1人1台端末をどの程度使いこなしているか調べるため、学校への質問紙調査では用途ごとの活用頻度を新規項目に加えている。その結果、「児童生徒の特性・学習進度等に応じた指導」で、週1回以上使っている割合は、小学校で48.6%、中学校で35.5%。「不登校児童生徒に対する学習活動等の支援」では、同じく小学校で37.8%、中学校で42.0%。「特別な支援を要する児童生徒に対する学習活動等の支援」では、同じく小学校で51.5%、中学校で45.7%だった。

 これらの数字からは、児童生徒一人一人の特性や学習進度に合わせたり、不登校や特別支援の必要性など児童生徒への個別事情に対応したりするためのICT活用ができている学校は、おおむね5割に満たないことが分かる。文科省では「21年度から端末が全国的に整備され、本格的な活用がいままさに進んできている。学校現場でも研修などを行いながら手探りでやっている状況で、そういった時点でのデータとして受け止める必要がある。こうしたICTの活用方法については、文科省のホームページでも事例を紹介しているので活用してほしい」と呼び掛けている。

平日もゲームを4時間以上 小学生の6人に1人

 児童生徒への質問紙調査では、ゲームやSNS・動画視聴の状況を聞き、各教科の平均正答率との相関も調べた。

グラフ4

 平日の月曜日から金曜日に、1日当たりテレビゲームをやる時間を聞いたところ、1時間以上と答えた小学生は75.7%で、21年度調査からほぼ横ばいだったが、コロナ禍前に行った17年調査の55.1%に比べると20.6%増えたまま高止まりしている。このうち4時間以上と答えた小学生が17.0%いた。小学生の6人に1人が平日も4時間以上テレビゲームをしている実態が浮かび上がってくる=グラフ4

 一方、1時間以上と答えた中学生は71.0%で、21年度調査からほぼ横ばいだった79.8%と比べ8.8%減少した。「減少した理由は部活動の再開とみられる。21年度は長期休校で休みが多かった部活動が、22年度にはかなり再開された」(文科省総合教育政策局学力調査室)。それでも、コロナ禍前の17年調査の58.5%に比べると、12.5%増えている。

 こうしたテレビゲームをやる時間と各教科の平均正答率をクロス集計したところ、1日当たりのゲーム時間が長いほど、平均正答率が低くなる傾向が全ての教科で鮮明となっている。例えば、小学校の算数の平均正答率をみると、ゲームを全くしないと答えた児童が72.5%だったのに対し、ゲームを1日4時間以上すると答えた児童は52.8%。中学校の数学の平均正答率では、ゲームを全くしないと答えた生徒が60.1%だったのに対し、ゲームを1日4時間以上すると答えた生徒は39.9%で、いずれも20ポイント前後の差があった。

グラフ5

 携帯電話やスマートフォンでSNSや動画視聴を行っている状況についても、今回初めて聞いた。その結果、平日の月曜日から金曜日に、SNSや動画視聴を行っている時間が1日当たり1時間以上と答えた小学生は50.6%、中学生は75.6%だった。このうち、4時間以上と答えた小学生が10.9%、中学生が15.4%を占めている=グラフ5

 SNSや動画視聴を行っている時間が長いほど、各教科の平均正答率が低くなる相関関係があることもはっきり確認されている。例えば、小学校の算数の平均正答率をみると、SNSや動画視聴が1日30分より少ないと答えた児童が69.9%だったのに対し、1日4時間以上すると答えた児童は52.2%。中学校の数学の平均正答率では、1日30分より少ないと答えた生徒が60.8%だったのに対し、1日4時間以上すると答えた生徒は41.4%だった。ここでも20ポイント近い差があった。

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