子育て関係者から小倉担当相に意見 要望相次ぐ

子育て関係者から小倉担当相に意見 要望相次ぐ
子育て施設の関係者と小倉担当相との意見交換会
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 小倉将信こども政策担当相は9月21日、子供政策立案の参考とするため子育て関係施設の代表者らを招いた意見交換会を内閣府で開いた。前週に続く2回目の開催で、来年4月のこども家庭庁発足を前に幅広く子供の保育・養育について意見を聴取するのが狙い。各施設の持つ現状の課題やこども家庭庁、子供政策に対する期待や注文が相次いだ。

 出席したのは、▽田中雅道全日本私立幼稚園連合会会長▽箕輪恵美全国国公立幼稚園・こども園長会会長▽奥山千鶴子子育てひろば全国連絡協議会理事長▽大川洋二全国病児保育協議会顧問▽桑原教修全国児童養護施設協議会会長▽水嶋昌子家庭的保育全国連絡協議会理事長――の6人。

 田中氏は、男性の育児協力と出生数との間には相関関係があるとした上で、コロナ禍を経て出生数が回復している国と日本との差が「家庭をどのように考えているか」であると指摘。ヨーロッパの国を例に、家族との時間を大事にする国では出生数が落ちていないと主張した。また、2人目、3人目の子供を欲しくても生活資金の面で不安があるため断念している世帯が多いとして、子育てをした人数に応じた年金の加算制度を導入し、多子世帯の老後の不安を解消するよう要望。学生時代に借りた奨学金の返済においても、その後に子育てをするようになった場合に減額返済や免除の仕組みがあれば少子化解消への道筋にもなると提案した。

 箕輪氏は、最近の子育てを巡る状況について、コロナ禍によるリモートワークなどの影響で子供も保護者も身近な人と関わる機会が減少し、人間関係が狭くなったために孤立感を深める傾向があることや、特別・個別な支援が必要な子供の入園が増加していること、保護者からは個別の支援相談をしたくても専門機関が少な過ぎて困っている、ICTの環境整備では地域によって差があり教育の差につながってしまうのではないかという懸念があることなどを紹介した。こども家庭庁に対しては、幼児期も含めた子供たちの教育については文科省との連携を図って進めることを強く要望した。

 女性の妊娠から子育てまでを一貫してサポートしている奥山氏は、コロナ禍で里帰り出産の比率が下がり、夫婦だけで乗り切る傾向が増えている実態を紹介。「そのため子育てに不安があるということが今1番大きな課題だと思っており、保育所に入るプランがどうなのか、仕事に復帰するタイミングをどうしたらいいのか、子育てサービスはどんなものがあるのか、こういった情報がしっかりと届けられておらず、全員が使えるようになっていない。このあたりを拡充していくことが子育てに対しての安心感につながると思っている」と述べた。

 病児保育に携わっている大川氏は「病児保育の目的を就労支援としているだけでは少子化対策にはならず、保護者の社会活動全般への参加を可能とする制度として活用すべきだ。それにより就労だけでなく、社会に貢献する活動、知的、芸術的活動、ボランティア活動が可能となり、男女共同参画社会が実現する。子育ての喜び、さらに社会活動を行うことによる自己肯定感や満足感を生み出すことが大切だ」とした。そのために病児保育の対象を病気の児童だけではなく、育児不安を持つ親とその児童、発達障害児、不安を抱える家庭の児童、貧困の児童なども対象にしたいわゆる「ゆとり保育」が必要とした。

 桑原氏は児童養護施設を運営する立場から、「近年、虐待を受けた子供たちの割合が入所児童の多くを占めるようになっており、支援の必要な子育て家庭が増えている。家庭養育を進めること自体が困難な時代を迎えていて、多くの社会資源を活用しながら子育てをしていく時代だ。児童養護施設は各市町村にあり、長年にわたって培ってきたノウハウ、専門性がある。今後もその専門性を社会資源として地域社会に還元していきたい」とした上で、現場の保育士、指導員、職員への支援、労働環境の充実を要望した。

 また3歳未満の児童を5人定員で預かる家庭的保育事業を行っている立場から、水嶋氏は「それまで1度も子供と接触したことがないまま子育てをしている女性がいて、地域につながりもなく、近くに頼れる人もおらず、1人で背負ってしまったり、情報を集め過ぎてどうしたらいいか分からなくなったりしている。そばで見守ってあげる人が必要で、地域に根差した家庭的保育は少人数だが母親たちが声を掛けやすい存在であり、私たちだからできることがあると思っている」と述べた。

 これらの意見などを受け、小倉担当相は「いただいた意見を踏まえて、関係府省と連携をしながら、一体的かつ切れ目のない子供政策を推進していきたいと考えている。わが国の場合、女性に育児家事の負担が強く行き過ぎているところがあり、女性にとってキャリアか子育てか二者択一を迫られているところにも少子化の原因があると思っている。男女共同参画の実現なくしては少子化対策の実現なしと思っており、働き方改革にも積極的に取り組んでいきたいと思っている」などと述べた。

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