保護者との連絡共有 脱ハンコ以外も大切(妹尾昌俊)

教育研究家、学校業務改善アドバイザー 妹尾 昌俊

学校も脱ハンコ?

先日10月20日に文部科学省から「学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化の推進について」という通知が出た。読者の学校の教職員や保護者の反応はいかがだろうか?

学校から保護者や児童生徒へのプリントやお知らせは頻繁にある。行事や授業参観などへの出欠、通知表の確認、プールに入るかどうかの連絡、部活動の入部届、子供の写真を学校ホームページに掲載していいかの確認など、押印が求められるシーンも多い。

今回の通知は、押印の省略を進めたり、プリントなどのデジタル化を進めたりすることを推奨したものだ。全ての文書等をそうしろというのではなく、必要に応じて進めてほしいという内容だ。

学校や教育委員会の方にとっては「文科省はやれと言うだけだからいいけど…」といった反応も聞こえてきそうだ。

私自身は保護者の一人としても大いに歓迎する内容だが、気掛かりなこともある。ここでは3点に整理したい。

業務改善とセットで進めよ

第一に、ハンコを削減したり、これまで紙配布だったものをメールやアプリで伝えたりするだけでは、それほど大きな手間の削減にはならないし、教職員の働き方改革に大きな効果を生むわけではない。

その文書や手続きそのものが必要なのかどうかという、抜本的な見直しが必要だ。例えば、小学校や中学校に入学したときには、忙しい4月に(保護者にとっても、学校にとっても)たくさんの書類の提出を求められる。しかも、手書きというものも多いのではないだろうか。入学関係書類のデジタル化は進めてほしいが、本来、教育委員会が把握している情報まで入力させるのは得策ではない。

別の例として、通知表関連では、評定や所見の入力⇒何重にもわたる校内でのチェック⇒出力・印刷⇒学校での押印⇒子供に渡す⇒保護者の押印⇒回収といったプロセスを踏んでいる学校も少なくないだろう(学校ごとに違いもあるが)。ここで保護者の押印をカットするだけでは大した時間は生まれない。そもそも、通知表はなんのためにあるのかに立ち戻って必要性等を検討し、例えば、面談でもフォローはできるのだから、毎学期出していたのを年1回にしたり、保護者には渡しきりにして回収はしないようにしたりすることができれば、かなりの業務負担軽減になる。

ストレスのかかる業務の放置は、不信感に

第二に、今回の動きは、保護者から学校への信頼に関わることであるという認識を持った方がよい、と私は捉えている。先ほどの例で言えば、入学関係書類で何度も住所等を書かせると、保護者の中には「学校は時代遅れだな」と感じる人もいるだろう。スマホのアプリなども含めて世の中はどんどん便利になっているのに。

保護者をお客様のように扱う必要はないが、ちょっとした負担やストレスがかかるものを取り除けるなら、改善した方がよいだろう。

スイッチング・コストを上回る効果的なものに

第三に、学校としては、ただでさえ忙しい日々の中、変えること自体に負担感があり、なかなか重い腰を上げられないことだ。保護者等への説明も必要となるし、一部の保護者からは紙の方がよいといった反応が来るかもしれない。変えること自体が手間なのだ。

個々の家庭等に応じた丁寧な対応が必要なこともあるとは思うが、スマホを持っている保護者も多くなっているから、デジタル化のメリットを伝えた上で、賛同を得てほしい。

思い出してほしいことがある。今般のコロナ禍の休校中に露呈したのは、学校と児童生徒、保護者との連絡手段が非常に脆弱(ぜいじゃく)だったということだ。一斉配信メールとプリント配布くらいでは、双方向性はほとんど生まれない。電話は2~3回線しかないし、大勢との連絡手段としては非効率。ウェブ会議もさまざまな事情もありできない。そういう学校も多かった。

いつまた、コロナをはじめとする感染症や地震などの災害で休校や学級閉鎖になる日が来るかもしれない。双方向性のあるコミュニケーション手段を持っておくためにも、今回の通知やGIGAスクール構想の推進などをチャンスにして、学校と家庭との間のコミュニケーションの仕方をアップデートしてほしい。


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